21/22 ブンデスリーガ 6節 ウニオン・ベルリンvsビーレフェルト【フォギーとの再会】


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今季未勝利のビーレフェルトは、2部時代から勝利したことのないウニオンベルリンのホーム、アン・デア・フェルステライに乗り込む。昨季のアウェイでのウニオン戦は開始2分で遠藤渓太にブンデスリーガ初ゴールを許し、以降の試合経過は私の記憶からは抹消されているが、無惨にも0−5で敗れている。ウニオンとは3季前まではツヴァイテで凌ぎを削った間柄(2節でも同じような表現を見た記憶が)だが、久々の昇格でどうにか残留にたどり着いたビーレフェルトとは違って、ウニオンは19/20のブンデスリーガ初参戦から健闘を続け、昨季は7位に入り今季は新設されたUEFAコンペティション、カンファレンスリーグにブンデスリーガからは唯一参加している。

 

ビーレフェルトのスターティングメンバーは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、プリートル、シェプフ、奥川雅也、ハック、ラスメ、クロース。

前節からの変更は、コンディションが万全でないヴィマーに代わりラスメが2節以来のスタメン。昨季からお馴染みの4バックに加え、プリートルとシェプフの2センターも不動になりつつある。直近3試合はスタートポジションを入れ替えながら442ベースでのスタートだったが、この試合は中央に入ったクロースと奥川の縦関係がはっきりとしていて、ラスメが右、ハックが左に入る4231で構えることになった。

 

ウニオン・ベルリンは、

ルーテ、バウムガルトル、クノッヘ、フリードリヒ、トリンメル、ギーセルマン、ケディラ、プレメル、クルーゼ、アウォニー、そして”フォギー”ことフォクルザマー。

原口と遠藤はベンチからのスタート。昨季までビーレフェルトでプレーしたフォギーは、ウニオンに移籍後、リーグ戦では初となる先発出場。前節はドルトムント相手に移籍後初ゴールを奪っており、旧友たちとの共演に向けて準備は万端だっただろう。

 

フランクフルト戦以降442で守備は大崩れしなくなっているが、この試合はメンバーと配置が変わったことでプレッシングが機能せず。3バックに対して4231とし、1トップのクロースと両SHがそれぞれ対面のDFからの縦のコースを牽制させることを明確にし、その背後で2CHを奥川にケアさせる形をとったことで、同じく3バックだったグラードバッハ戦のように、プレスはかかれどクロースがカバーに奔走しいたずらに体力を消耗するという事態は避けられた。しかし誰がどこまで出ていくのか、降りてついていくのかというところは前節までと比べてファジーで、7分のハックがCBまで激しく寄せるも後ろがついてこなかったシーンに代表されるように意識のずれが目立った。また左サイドのハックは、自身の対面のHVからWBに出された際にそのまま内側を切ってプレスを継続することができるが、右サイドに入ったラスメはそのように気の利いた動きができない。これを見越した誘導やケアがあったわけでもないので、ウニオンの左WBギーセルマンに余裕を与えてしまうことが多かった。ビーレフェルトはこれまで全ての試合、全てのハーフで相手を下回るポゼッションを記録しているが、ウニオンもそこまで保持へのこだわりが強いわけではないようで、多少苦しいと簡単にロングボールをチョイスしてきた。ビーレフェルトの今までの対戦相手では一番ボールを放すのが早いチームで、またウニオンとしても苦し紛れではなくそもそもの用意として簡単に蹴ることを選んでいたので、セカンドボールの回収というフェーズでもビーレフェルトはあまり優位に立てなかった。以上のことから、ビーレフェルトとしては崩されているわけではないがあまり奪える気もしないという展開に。保持においても、ウニオンがハーフウェイライン+15mくらいのところまで前線の3人がリトリートしラインのはっきりした343気味のブロックで構えてきたことで、プリートルがCBの間に降りることも多くいつもより後ろでゆったりと回せたが、その分確実性のある前進のルートを見出せずにいた。ニルソンが開いてボールを持ち、ハックとラウルセンがレーンを入れ替えながら受けるといういつものルートはしっかりと牽制されているし、仮に通せてもすぐに囲まれてやり直しを強いられてしまう。オルテガのフィードもコンパクトなウニオンのブロックの中で回収することは難しかった。トランジッションの流れでシェプフが引き出し前を向き運んで自らシュートという場面や、ピーパーとプリートルの2人で3トップをかわし、降りて引き出した奥川が運ぶというシーンはよかったが、どちらも再現性のある形ではなかった。

 

ロストからの被カウンターが目立つようになり、ギーセルマンのクロスからファーでトリンメルが折り返し、アウォニーにフリーで合わせられるという危険な形も徐々に出現。大外へのクロス→折り返しをフリーで打たれるという形は、直接失点にこそ結びついていないものの前節からよく狙われている。40分くらいからは、さすがに左サイドの手当てが必要と判断したかラスメとハックの左右を入れ替えた。後半も継続してラスメが左、ハックが右に。本人がサボっているわけではないが、やはりラスメはあまり守備が上手とは言えないので、今度は右WBのトリンメルに余裕を与えることになってしまう。また左では、CBのクノッヘとフリードリヒがパス交換を繰り返してハックを走らせ、SBのブルンナーはギーセルマンがピン留めした状態でクルーゼがライン際に流れてきて引き出すという、ビーレフェルトからすればかなり厄介なボールの動かし方も見せるようになってきた。ただし、45分から60分、すなわち後半の最初15分間でより多くゴールに迫ったのはビーレフェルトの方。ウニオンが前半に比べると前に出てくるようになり、全体的にオープンな展開になったこともあるが、奥川やハックがセカンドボールを回収してフィニッシュへと繋げた。特にニルソンがアウォニーを潰し切り、拾ったハックが右サイドに逃げたクロースに通したシーンと、右サイドで奥川が回収しハックに渡したシーンのどちらかは決め切りたいところであった。

 

61分、ラスメに代えてヴィマー。この辺りの時間帯はセットして守備する場面を除いて前線は流動的になっていてたが、ヴィマーが右サイドに入り、ハックが左サイドに戻るということで一旦落ち着いた。66分にはウニオンも2枚替え。アウォニー、フォクルザマーを下げてベーレンス、ベッカーを入れ、最前線をそっくりそのまま入れ替えた。フォギーは強さを活かしたポストプレーと、味方を使う丁寧なパスで存在感を示したが、決定的な仕事は出来ずにここで交代となってしまった。オープンな展開が手伝い、前半に比べれば相手陣地でボールを持てる時間も増えたが、逆に速攻を食らってしまう場面も。特にピーパーが、アウォニーに対しても、代わって入ったベッカーに対しても後れを取ることが多かった。78分に疲れ気味の奥川、ハック、さらにラウルセンに替えて、クリューガー、クンツェ、アンドラーデを投入。クリューガーは左サイドに入り、クンツェは本職のCHに。シェプフが押し出される格好で奥川の務めていた2列目の遊軍的なポジションに移動した。この交代はやや消極的にも見えるが、アウェイで、スコアはイーブン、さらに奥川とハックの両方を下げるとなると、中盤とFWを繋ぐタスクを任せられるのはシェプフくらいなので致し方ないか。ウニオンは80分にトリンメル、プレメルを下げ、原口元気とリエルソンをピッチへ。ビーレフェルトも負傷したブルンナーに代えてデ・メディーナを入れる。ラストの10分間は、ほとんどウニオンのペース。ビーレフェルトにとっては勝ち点1狙いの逃げ切りもちらつく中、88分、オルテガゴールキックを原口に頭で弾かれ、これが左サイドに流れたクルーゼにつながる。縦に通すとベッカーがピーパーを抑えて内側に繋ぎ、最後はベーレンスがニルソンを背負いながら難度の高いシュートを突き刺し、ついに失点。ゴール自体はベーレンスのスーパーゴールだが、その前のところ、ベッカーに入るタイミングで先にクリアしようとしピーパーが触れず、内側に通されてしまったのは痛かった。ベーレンスはこのゴールで”入った”のか、直後にもクロスバー直撃のシュートを放つ。ビーレフェルトはAT、プリートルのスルーパスに抜け出したクリューガーが綺麗にDFをかわしゴール前まで迫ったが、折り返しを阻まれてしまい、得点に至らず。劣勢の試合を決壊させずに終盤まで運んだが、最後にベーレンスの一発に沈む悔しい敗戦で16位に転落した。

 

 

ウニオン・ベルリンは、今やビーレフェルトにとって完全に格上。その点で、この試合は結果については割り切ってしまっていいだろう。この試合ではウニオンがそこまで積極的にプレッシングをかけてきたわけではないという事情もあるが、今までよりはゆったりとボールを回す時間もあり、再現性の点で疑問はあるがピーパーとプリートルがパス交換で第一ラインを越えたり、ピーパーが相手のスライドの遅れをついて1人で持ち運んだりと新たな形も出た。得点の少なさが大きな問題になっている中で、保持で新たなトライをしていることは悪くはないだろう。気がかりはラスメを攻守両面で上手く組み込めていないこと、選手交代で攻撃に変化をつけられないことあたりだろうか。そろそろ開幕して2ヶ月が経つので、今あるカードを最大限に活かすことと、誰が出ても安定して守れる組織の整備は、重要なミッションになる。出遅れていたエジミウソン・フェルナンデスとセバスティアン・ヴァシリアディスも、公式戦の出場は代表ウィーク明けとなるだろうがようやくチーム練習にも合流してきている。地力からすれば、勝ち点がついてこないことは仕方がない。ただ無抵抗で連敗を続けた昨季の序盤に比べれば、試行錯誤の数も、そこから得られたサンプルも格段に多い。ポジティブな材料、より確実性の高い材料を上手く結びつけて、ここから反撃の秋にしたい。

ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 9節

7月からスタートしているプロ・リーグは、これが前半戦のちょうど折り返しとなる9節。直前のミッドウィークに5節の延期分が行われたので、全チームの消化試合数がようやく揃ったが、この9節の終了時点で1位から12位までが勝ち点5差と大混戦である。本命の王者クルブ・ブルッヘは勝ち点18で首位にいるものの6強との直接対決を1試合(それもヘントに大敗)しか終えていないことを考慮するとあまり勝ち点は伸びておらず、開幕は大きく出遅れたアントワープ、ヘンクはついにクルブと勝ち点1差まで詰め寄ってきている。この2チームと勝ち点17で並び、上位に踏みとどまり続けるオイペンの躍進も見逃せない。シント・トロイデンは一時の停滞を完全に打破し、ついにプレーオフ2圏内の8位に上昇。試合内容を見てもしばらくはこのあたりでの順位争いに残っていきそうだが、8位から12位まではシント・トロイデン、メヘレン、オーステンデ、スタンダール・リエージュ、そしてシャルルロワの5チームが勝ち点13で並んでいる。下位はベールスホットが未だに勝利なし。これまでリーグ最多の5枚のレッドカードを受け、2節のヘント戦のドロー以降は7連敗と大いに苦しんでいる。

 

 

 

 

クルブ・ブルッヘ 1-1 ルーヴェン

キャプテンのフォルマーを怪我で欠く以外はほぼベストメンバーと言えるクルブ。デ・ケテラーレを偽9番として起用する433をやはりベースとしていくのだろう。ソワーにとっては早くも古巣戦。ホームでのルーヴェン戦はこれまで全勝のクルブが、ハイプレスでほとんど相手陣地にルーヴェンを押し込んで試合を運ぶ。しかし532でしっかりとゴール前を固めるルーヴェンの守備陣を効果的に動かせず、押し込んではいるもののクルブのシュートはほとんどペナルティーエリアの外から。時折発動するルーヴェンカウンターアタックの方が、どちらかといえばゴールに近いと感じさせられるような前半は、42分にンソキがバックパスをミスして与えたCKをルーヴェンが決めて、展開とは裏腹にクルブがビハインドで折り返す。ルーヴェンのメルシエのキックは流石の精度で、ニアで合わせたエズカジャルのマークを外してしまったのもンソキだった。

後半もほとんどクルブが攻め続ける展開だが、なかなかゴールは遠くファンのため息とフラストレーションばかりが画面から伝わってきた。77分にルーヴェンのカウンターを止め、逆にクルブがカウンター。SBのマタが右サイドを1人で切り裂き、ミドルシュートでどうにか同点に追いついた。ルーヴェンは失点直後にマルテンスのシュートがポストを叩くなど新たにチャンスを作ったが勝ち越しはならず。このまま1-1で試合が終わると、金曜夜のヤン・ブレイデル・シュタディオンにはクルブファンからのブーイングがひたすら鳴り響いた。

USGが敗れたため1位の座は守ったクルブだが、下位のルーヴェン相手にホームでのドローは今後のスケジュールを考慮すると手痛い結果に。引いた相手を崩しきれず、何よりビハインドの時間が30分以上続きながら切った交代カードは2枚で、そのうちの1つはバランタに代えてムバンバとアンカーを入れ替えただけ。もちろん交代をしなかったからベンチが悪い、消極的というような単純な話ではないが、得点が欲しい展開でドストを入れた以外に切れるカードがないというのは少し頭が痛いところだろう。降格圏に沈むルーヴェンは大金星とはならなかったものの、アウェイのクルブ戦で初めての勝ち点。カウンターは脅威で、メルシエとアタッカーたちのコンビネーションも悪くなく、今後もコンスタントに得点は取れるだろう。

 

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スタンダール・リエージュ 1-2 シント・トロイデン

前節はともにホームでダービーマッチを落としたチーム同士の対決だが、そのニュアンスには大きな差。開始早々に退場者を出しせっかくのクラシコが壊れてしまったスタンダールに対し、STVVは上位ヘンクを追い詰め、敗れながらもセルクル戦以来の好調のイメージを継続。鈴木優磨、コナテの戦列復帰と林大地、ライストナーの加入以来メンバーと戦い方も固まってきて、今月は3試合全て同じスタメンで戦っている。

前半は、40分過ぎまで両チーム合わせてシュートが1本だけ、トータルのxGが0.03というとても静かな時間に。ホームのスタンダールがボールを持つ時間が長いが、STVVもスタートはラインを高く設定し前から奪いにいく意図を見せる。スタンダールは左サイドに人数を集め、右サイドでSBのシケをアイソレーションさせるようにボールを動かしていた。アマラーが降りて引き出すことが多く、右SHのラフィアもほとんど左サイドや中央まで流れてくるため、このサイドでの対応はSTVVも苦慮していた。フリーでシケにボールが渡った際には、対面のカカーチェがすぐに対応できるような準備はしているように見えていたが、前半終了間際、カカーチェが攻撃参加していた分空いたスペースを使われてカウンターを許し、一度は防ぐもさらにボールを回収したシケをコナテが倒しFKを与えてしまう。ゴール正面からやや右サイド寄り、25mくらいの距離だが、アマラーが動かしたボールをガヴォリーが決めてスタンダールが先制。キーパーのシュミット・ダニエルにとっては、味方の選手たちがブラインドになって軌道がよく見えず、難しいシチュエーションであった。

1点を追いかけるSTVVはハーフタイムに橋岡大樹と林大地を下げ、原大智とバロンゴを投入する。原大智はこれまで出場時間と出番の状況が限定的で思うようなアピールができていなかったが、この試合では45分間のチャンスをもらい、スペースメイクや味方とのコンビネーションで他の前線の選手とは違った特徴を見せた。バロンゴは林大地の加入以来出場機会を失っていたが、この試合では代わった橋岡のポジション、右WBにそのまま入った。同点ゴールのシーンは、そのバロンゴからライン際で上手く引き出したデ・リダーのパスを受けた鈴木優磨が中央で潰れ、こぼれ球を拾ったダーキンが左サイドから上がってきたコナテに繋ぐと、コナテはカットインしシケをかわしてニアにミドルシュート。一度キーパーに下げたところから、スムーズにボールが回ってゴールを奪うことが出来た。この数分後の56分には、ダーキンとデ・リダーに代えてライツとブリュースを投入。勝ち出してからプレゼンスが下がり気味の2人だが、ともに保持でより持ち味を発揮できる選手で、少しずつSTVVがボールを握る時間が長くなる。右SHのラフィアが左に流れる分、トランジッションで余裕が生まれやすいラヴァレーからの球出しが目立つように。これまで2本しかシュートを打てていなかったが、この交代から15分で4本のシュートを放ち、シュート数でスタンダールを逆転。ブリュースからはいいタイミングでボールが入り、これまではなかったような、細かいパスワークでPA内に侵入していくというシーンも多く見られた。逆転ゴールを演出したのもブリュースとライツの2人。88分、左サイドでカカーチェが持つと、ブリュースがSBの裏へ走って受け、ダイレクトで折り返すと原大智の背後から走り込んできたライツが合わせて決めた。

スタンダールはこれでホームで連敗となり、試合終了時にはサポーターから大きなブーイング。クラシコのショックを払拭できなかった。STVVはハーフタイムと同点直後、2度の2枚替えで見事に試合の流れを引き寄せ、勝ち点3を積み上げPO2圏内の8位へジャンプアップ。前節ヘンク戦は交代でむしろ流れが悪くなり逆転を許したが、この試合はホラーバッハの采配が奏功した。

 

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ユニオン・サン・ジロワーズ 1-2 アントワープ

開幕から好調を維持するUSGと、直近のミッドウィークでヘンクに勝利しいよいよ上位争い真っ只中に食い込んできたアントワープの上位直接対決。残念ながらピッチ上での共演とはならなかったが、川崎フロンターレの育成組織で1学年違いであり東京五輪でもチームメイトであった三笘薫と三好康児の対決ということで注目の集まる一戦に。直近のカップ戦でUSG加入後初ゴールを奪った三笘はベンチスタート、三好は完全にレギュラーに定着し、連戦でも疲れ知らずの先発起用が続く。

前半主体的に試合を動かしていくのはアウェイのアントワープ。マッチアップの噛み合わせ上フリーになりやすいSBを活用して前進を試みる。CBが開いてSBを押し出し、中央ではCHのフェルストラーテとゲルケンスがかわるがわる落ちてくる。サイドの三好とサマッタは、例のごとく中央に顔を出す機会が多かったので、結局は中盤での奪い合いが激しい展開へと変わっていった。アントワープが決定打を繰り出せない中で、この展開はむしろUSGにとって好ましい状況に。2人で完結させられるファンゼールとウンダフの2トップでのカウンターが徐々に目立つように。40分、左サイドでのカウンターから最後は逆サイドを上がってきたニューコープがフィニッシュしUSGが先制かと思われたが、これはオフサイドで取り消し。しかしその再開のFKをキーパーのビュテから受けたフェルストラーテが、リターンしようと下げたバックパスをファンゼールに狙われ、ビュテが掻き出すもこぼれ球をウンダフに詰められ失点を許してしまう。アントワープとしては、VARチェックが長くかかったことで集中を取り戻すのが難しかったのかもしれない。ここまで再三シュートストップを見せてきたビュテもさすがにブチギレ。直後にフェルストラーテは前節も決めている直接FKで名誉挽回の機会を得たが、これはUSGのキーパー、モリスのビッグセーブに阻まれ同点とはならなかった。

追いかける展開になってしまったアントワープは左SBのバタイユに代えてCBのセックを投入。ゲルケンスを左WBに入れて、プリスケ就任後ではおそらく初めての5バックに変更。ゲルケンスは気の利いたランニングやポジショニングが光るプレイヤーだが、便利屋のようになってきている。このシステムチェンジは、いずれにせよ中央に入ってくる三好とサマッタを初めからフライに近い位置でプレーさせるという狙いもありそうだが、どちらかといえば、USGの2トップへのケアを念頭に置いた施策であったように感じる。ミラーゲームのようになったことでUSGはむしろボールを奪いにいきやすくなり、アントワープの保持は前半に比べて機能せず、人数の揃っているところに突撃しては阻まれている、というような印象を持った。60分に三好、サマッタ、ゲルケンスを下げて、フィッシャー、エッゲシュタイン、ベンソンを入れる3枚替え。これで劇的に変わったというわけではないが、交代選手たちが仕事をする。70分に左サイドでボールを拾ったフィッシャーが自分で20mほど運んでからインスイングのクロスを上げると、フライがファーに消えてフリーでヘッダー。今季11点目となるゴールで同点に追いつく。79分には、ブタがUSGのハイプレスをかいくぐり、フィッシャーに渡してカウンター発動。左サイドを上がってきたベンソンに丁寧なラストパスを送り、これをベンソンが決めて逆転に成功した。三好がピッチを退いた15分後の75分に登場した三笘は、86分に中央から右足で惜しいミドルを放つもビュテに阻まれる。USGは試合を通じてアントワープを大きく上回る19本のシュートを放ち、過半数の10本を枠に飛ばしたが、そのうちの9本をビュテにセーブされ追加点を奪うことが出来なかった。

金曜日に試合を行ったクルブがルーヴェンと引き分けていたため、勝てば再び首位に立てるチャンスであったUSGだが、ここは足踏み。逆に連勝のアントワープはUSGをかわし、オイペン、ヘンクと並び勝ち点17で、首位クルブと1差まで上がってきた。

 

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ベールスホット 0-3 オイペン

今季唯一勝利がなく、他のチームとかなり離されて最下位に沈むベールスホットだが、この日も開始5分にファンデンベルフが退場。その数分後に先制を許すと、39分には6節シャルルロワ戦でも開始5分で退場しているデ・スメトが今季2度目の退場。シャルルロワ戦に続き、今季2度目の9人での戦いを強いられる厳しい展開に。好調を維持するオイペンは楽に試合を運び、危なげなく3−0で今季5勝目。勝ち点を17に伸ばし2位に浮上した。ベールスホットの鈴木武蔵はベンチスタートで、69分から出場した。

 

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ズルテ・ワレヘム 2-2 コルトレイク

アウェイのコルトレイクが、後半にスレマニのお膳立てからゲイェとオケンシーがそれぞれゴールを奪い2点を先行する。ズルテ・ワレヘムは84分にドンぺのアシストからプレティンクスが決め1点を返す。さらにその直後、かなり軽微な接触であったように見えるがドンぺが倒されてPKを獲得し、これをフォッセンが決めて同点に。ここまで思うように勝ち点を積み上げられていないズルテはホームで勝ち点3を取りたかったが、怪我で一時戦列を離れていたドンぺが復調傾向にありこれは明るい材料だ。一方のコルトレイクは勝ち点2を落としてしまった恰好だが、7位と依然PO2圏内に留まっている。

 

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ヘント 2-1 セルクル・ブルッヘ

ともに勝ち点8と苦しむチーム同士の対決は、連戦中のヘントが逆転で4試合ぶりの勝利。開幕3戦は無敗だったセルクルはこれで16位にまで落ちてしまっている。

 

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オーステンデ 2-2 アンデルレヒト

ホームのオーステンデが、少ないチャンスを活かしゲイェの2得点でリードを奪って前半を折り返す。2点ビハインドに加えて後半立ち上がりにはクアメが退場し、厳しくなったアンデルレヒトだが、ジルクゼーのゴールで1点を返すと、82分、セルヒオ・ゴメスのクロスをファーでベニート・ラマンが合わせて同点に追いつき、オーステンデからどうにか勝ち点1を持ち帰った。ラマンのヘディングシュートはわりと珍しいのではないだろうか。

 

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シャルルロワ 0-2 メヘレン

前節今季初黒星を喫したシャルルロワは、ホームでよもやの連敗。もともと引き分けが多いために、順位は一気に2桁に。勝利したメヘレンは、今節もニコラ・ストルムがゴール。直近5試合で6得点を挙げている。

 

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ヘンク 3-0 スラン

ミッドウィークのアントワープ戦に敗れて首位に立つチャンスを逃してしまったヘンクだが、オヌアチュのハットトリックで快勝。オヌアチュはこれで公式戦5戦連発となり、いよいよ得点ランクトップのフライを猛追開始。先制点は伊東純也のアシストだが、伊東純也→オヌアチュのホットラインでの得点はELでのラピド・ウィーン戦から4試合連続。

 

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21/22 ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 5節延期分

こんにちは。今回は、アントワープアンデルレヒト、ヘントの3チームがEL・ECL予選を戦った影響で延期されていた5節の2試合。ともに強豪同士の対戦、またアントワープvsヘンクは三好康児と伊東純也の日本人対決でもあるため、嬉しいことにどちらの試合もDAZNでの配信があった。

 

アントワープ 4-2 ヘンク

調子を上げてきたアントワープと、この試合に勝利すればクルブと勝ち点で並び、得失点差で首位に立てるヘンク。アントワープはメンバーが固まり、3週連続ミッドウィークに試合がある2週目だが、多くのメンバーは固定。三好康児も連戦ながらスタメンでの出場が続いており、プリスケ監督からの信頼の厚さが窺える。連戦ということもあってか前節のSTVV戦ではさながらターンオーバーといった具合でメンバーを大きく入れ替えていたヘンクは、このアントワープ戦ではトルストヴェット、ヘイネン、オヌアチュらをスタメンに戻した。伊東純也は三好と同様、連戦でも出ずっぱりである。

最初試合を支配したのはアウェイのヘンク。エイティングが中盤の底に入るようになってから、ボールを大事にする傾向が増した印象がある。トレゾールや伊東にボールが入っても、無理せず作り直すことが多かった。このゲームでは特に右サイドで伊東とムニョスのコンビネーションが威力を発揮しており、開始早々から何度もチャンスを演出。先制点はムニョスからのスルーパスに伊東が抜け出し、ダイレクトで折り返してオヌアチュが反転しながらフィニッシュ。伊東のアシストからオヌアチュがゴールを決めるのはこれで公式戦3試合連続である。

時折アントワープのカウンターも見られたものの最初の20分はヘンクが支配的であったが、その後はアントワープのゲームになる。442のSHで出場しているフィッシャーと三好があまり開かず、中央に入ってきてボールに触り、サイドはSBに明け渡す。混雑しすぎないように誰かは必ずサイドに抜けてバランスを維持し、失っても中央の密度が濃いためカウンターを食い止める、ないしはすぐに奪い返すことが可能になっていた。この日はCHに入っていたゲルケンスが、かなり気を利かせて危険なスペースを埋めていたことも大きいだろう。27分にCKのこぼれ球を拾ったデ・ラートのシュートで同点に追いつくと、ヘンクはやや落ち着きを失いアントワープショートカウンターを軸に陣地を回復できるようになってくる。相手陣地深い位置で三好がボールを奪回してからの流れで得たFKをフェルストラーテが決めて逆転に成功すると、41分にはフェルストラーテのミドルシュートを三好が詰め、3-1とする。EL予選ではゴールを決めていた三好だが、リーグ戦ではこれが待望の今季初ゴールとなった。ヴァンデヴォールトの弾いたボールが綺麗に三好のところに跳ね返ってきたが、これはフェルストラーテがシュートを放つよりも前にゴール前に走り込んだ三好が報われたゴールと言っていいだろう。

後半は再びヘンクが一方的に押し込むがアントワープはキーパーのビュテを中心に得点を許さず、逆にルクミのミスパスを拾ったサマッタの折り返しをフライが決め、点差をさらに広げた。フライはこれで早くもリーグ戦10点目。ヘンクは終盤にオヌアチュがPKを決めて1点を返すも万事休す。昨季どころか、2連敗でスタートした開幕時とすら全く別のチームになっているアントワープは、今後本格的に上位戦線を賑わせそうだ。試合数が揃うこのタイミングで首位に立つチャンスを逃してしまったヘンクは今季2度目の4失点。翌週もELがあり連戦が続くが、立て直して10月の代表ウィークを迎えたいところだ。

 

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アンデルレヒト 1-1 ヘント

大勝したクルブ戦の印象が強いものの9月は連敗中。降格圏近くに沈んでいるヘントは、連勝中のアンデルレヒト相手にカストロ・モンテスのミドルシュートで先制。アンデルレヒトに長い時間ボールを握られながらも、ソリッドな442を保ち前半はしぶとく守り抜いた。リードを守りつつ、ベズスのキープ力を活かしたカウンターなどで追加点のチャンスを狙っていきたかったが、57分左サイドをオーバーラップしてきたセルヒオ・ゴメスをカストロ・モンテスが倒し、PKを与えてしまう。これをラファエロフが決めて同点に。その後もアンデルレヒトが攻め続ける展開が続いたが、大きなチャンスはどちらにも生まれず痛み分けとなった。ハーフタイムで退いたヘントのデュポワトルが、後半試合中にスタンドでインタビューを受けるというレアな光景もあった。

 

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21/22 ブンデスリーガ 5節 ビーレフェルトvsホッフェンハイム

2021年9月18日

21/22 ブンデスリーガ 5節

ビーレフェルト 0-0 ホッフェンハイム

 

今節はホッフェンハイムとのホームゲーム。ホッフェンハイムは開幕戦こそ大勝したものの直近2試合はドルトムントマインツに連敗。かつてホッフェンハイムのセカンドチームを率いていたビーレフェルトの監督フランク・クラマーと、ホッフェンハイムでプロデビューを果たしているロビン・ハックにとっては古巣対決となる。昨季の対戦はアウェイで0-0、ホームで1-1とどちらもドロー。過去4度の対戦でビーレフェルトは勝利したことがなく、09年5月のホームでの対戦では現在湘南ベルマーレに所属するウェリントンにゴールを決められ0-2で敗れている。

 

ビーレフェルトのスターティングメンバーは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、プリートル、シェプフ、奥川、ハック、ヴィマー、クロース。

 

前節怪我で欠場したCBピーパーがスタメンに復帰。それ以外はグラードバッハ戦と同じメンバー。しばらくは442をベースに戦っていくと思われる。なお今節は奥川雅也とヴィマーのポジションが前節と入れ替わり、右SHに奥川、最前線でクロースの相方にヴィマーが入る格好となった。

 

一方のホッフェンハイムは、

バウマン、フォクト、リチャーズ、カデジャーベク、ラウム、グリリッチュ、サマセク、ブルン=ラーセン、クラマリッチ、バウムガルトナー、ベブー。

 

前節からは5人を入れ替えている。ベースは4231だが、監督のセバスティアン・へーネスは複数の異なるシステムを使い分け、試合中でも戦い方に変化をつけてくる印象がある。グリリッチュがスタメンに復帰しているので、組み立ての形は前節と違ってくるだろう。

 

ここまでのビーレフェルトはまず非保持での守備組織の安定が一つのテーマとなっているので、そうしたホッフェンハイムの変化にどこまで対応できるかという点は注目したいポイントであったが、この試合のハイライトは序盤の決定機ラッシュ。まずは2分、左サイド中央くらいのスローインで、サイドに流れて受けるヴィマーと入れ替わるようにハックが中央へ。フリックしたボールを受けドリブルで切れ込むと、DFの視界から消えるように右外へランニングしたクロースへループパス。クロースの折り返しに飛び込んだヴィマーはゴールの目の前で触るだけだったが、空振りしてしまう。まずは一つ、ヴィマーとハックのスタートポジションを近くしたことがいきなりチャンスにつながるというシーンだった。9分には、オルテガのフィードをクロースが頭で流し、拾ったヴィマーが左から走ってきたハックへ。狙い澄ましたグラウンドのシュートは、ポストの内側にあたりゴールならず。13分にはまたもオルテガのフィードをクロースが競りヴィマーが拾って、今度はクロースが絶好のシュートチャンスを迎えるがバウマンに阻まれてしまう。フランクフルト戦、グラードバッハ戦ではやや機会の減っていた、オルテガのフィードから立て続けにゴールに迫った。残りの80分弱でこれ以上の決定機を創出することはできなかったので、結果的にはここで仕留めきれなかったことが悔やまれた。

 

非保持においては、この試合もラインを高く保ってプレッシングに打って出たが、ライン間を自由に動くクラマリッチを警戒したかCHのプリートル、シェプフは自重気味。ホッフェンハイムのDFラインにボールがあるときは2人ともホッフェンハイムのCH、サマセクとグリリッチュに出ていける距離を保つが、実際にボールが入ると奥川が絞ってケアし、CHのどちらか1人(主にプリートル)は下がってDFラインの前をプロテクトできるポジションを取った。前節グラードバッハ戦では右SHヴィマーの守備負担をクロースがカバーすることで前進を食い止めていたが、この試合では2試合ぶりに右SHに入った奥川のポジショニングが光った。ファーサイドのSHが絞ってCHをケアする形は、前半半ばくらいから左右両サイドで行われるようになる。25分くらいまでは上手く前進を食い止めていたビーレフェルトだが、徐々にホッフェンハイムが工夫を凝らしてくる。バックラインではラウムが下がって中央でフォクトが中盤に出る、右SBのカデジャーベクを押し上げて3バック化するなどの動きで、プレッシングの基準を迷わせる。前方では中⇄外の移動を増やして、CBを外に釣り出そうという狙いが出てくる。これらのホッフェンハイムの動きは効いていて、前半は9本のシュートを放ったが、ビーレフェルト側から見てあまりやられた印象がないのは、ほとんどDFラインの背後を取られてないからであろう。1トップのベブーはどちらかというとサイドに流れて足下でボールを触りたいように見え、途中から何度か裏に抜けようという仕草は見せたものの出し手と意図の合うタイミングがなかった。唯一危険だったシーンは、右サイドからグリリッチュがファーで走ってくるカデジャーベクへサイドチェンジ。頭での折り返しをベブーがフリーでボレーのチャンスを得たが、これはピーパーが決死のブロックで防いだ。

 

後半はボールを握られる時間こそ伸びたものの、大きく崩されるようなシーンはなし。唯一嫌な運ばれ方をしたのは、グリリッチュが左CBの脇に降りて、フリーになった左SBのラウムに持って行かれた場面。グリリッチュの降りたり降りなかったりというポジショニングは、奥川を困らせていた。ここは奥川個人というより、CHやFWとのマークの受け渡しやそれぞれが管理するエリアの整理が、解決策となるだろう。何はともあれ、この日は非保持に関してSHとしての奥川は十分及第点。チームとしても、保持のバリエーションを持ち、また個人の能力での打開もできるホッフェンハイム相手に90分間守り通すことができたことは自信として良いだろう。

 

反面課題が残るのは5試合で3得点の攻撃か。この試合ではオルテガのフィードが火を吹いていたものの、直近2試合で見せていたようなショートカウンターでのチャンスはなし。いい守備ができるようになっているだけに、もう一段レベルをあげて攻撃に繋げられるようにしたいところだ。保持では、現状オルテガのフィード以外に機能している前進のルートは、ラウルセンが大外で上がり、ハックが内側を降りてきてどちらかにニルソンが当てる形くらい。オフにU21EUROとオリンピックを戦い疲れの見えていたピーパーは、怪我で前節を休んだことがいいリフレッシュになったかビルドアップでの消極性がなくなり攻守両面で今季一番のパフォーマンスではあったが、チーム全体としてややオルテガのフィードに頼りすぎていることが気になる。オルテガは組み立てにも十分参加できるほどの足下の技術を持っているが、現状はビルドアップにオルテガを組み込めておらず、ロングフィードの砲台か、詰まったときに一旦預ける場所というような役割に留まってしまっている。オルテガのフィードは脅威になっているが、困ったからとりあえずオルテガに下げるというようなケースが増えると、大抵は相手のプレッシングがキーパーにまで来てしまい、少しパスがズレたり緩くなったりしただけで蹴り出す以外の選択肢がなくなってしまう。せっかくの武器を有効に活用するためにも、ビルドアップの整備に着手してはどうかと思う。

 

武器を有効に使うという観点からいくと、気になるのは途中出場が続くラスム。今季ブンデスリーガでの最高速度を記録するなどリーグ屈指のスピードを持っているが、そのスピードを活かした攻撃を出来たシーンがこれまで5試合で思い浮かばない。同様にセラやこの日は出番がなかったクリューガーも、まだ良さを出し切れてはいない。前線のメンバーは奥川とクロースを除き全員が新加入選手なためまだ難しい部分もあったのかもしれないが、そろそろ新たな攻撃のカードを手にしたいところだ。

 

終盤には、アンドラーデがSBとしてビーレフェルトデビュー。クラマー監督は試合前の会見でアンドラーデについて、もう少し適応のための時間を与えたいとし出場が不透明であったピーパーの代役としてのCBでの出場の可能性を否定していたが、途中出場のチボーラが腰の打撲で交代を余儀なくされたために左SBでの緊急出場となった。短い時間で何度も積極的なオーバーラップを見せたが、クロスの精度が低くフィニッシュに結びつけられなかった。SBも対応可能なCBであるが、ラウルセンとチボーラが健在なうちはSBとして起用されることはあまりなさそうである。

 

 

内容面ではそれなりに充実した試合が続いているが、依然未勝利。10月のインターナショナルブレイクまで、残すはウニオン、レバークーゼンとの対戦。簡単な相手ではないが、そろそろ勝ち点を積み上げたい。

 

 

 

 

 

 

ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 8節 【ベルギーリーグ全部見るマン?】

こんにちは。今回はベルギー1部、ジュピラー・プロ・リーグ8節の様子を、DAZNで配信された試合を中心に振り返ります。

今季はスーパーカップを皮切りに、DAZNがベルギーリーグの試合を毎節4試合程度配信してくれていて、その全てを見ているのでベルギーリーグ全部見るマンを名乗りたいところですが、DAZNで配信がない試合に関してはハイライトしか見ていないので、自称する資格があるのか微妙なところです。

 

なお、今回DAZNで中継があったのは

シャルルロワvsクルブ・ブルッヘ

シント・トロイデンvsヘンク

スタンダール・リエージュvsアンデルレヒト

の3試合です。

 

 

シャルルロワ 0-1 クルブ・ブルッヘ

3勝4分とドローが多いため勝ち点はあまり伸びていないが、7節終了時点で唯一無敗をキープするシャルルロワ。ここまでは比較的中位〜下位との対戦が多かったため、試金石となる試合。マダガスカル代表イライマハリトラは、アントワープへ去ったドゥソレイユの後を継いで新キャプテンに就任してから初めての出場となった。一方のクルブは前節オーステンデを破って首位に再浮上し、ミッドウィークのCLではパリSGと1−1のドロー。中3日での連戦が続いたので少しメンバーを入れ替え、新加入のムアッサ、復帰加入となったウェズレイがリーグ戦での初先発を果たした。

試合はクルブがボールを握りながら、シャルルロワが速い攻撃で応戦するという形で大体推移していくが、試合全体を通してよりポジティブな印象を残したのはシャルルロワの方。突破力、機動力に優れるザルーリ、カイェンベが、主に左サイドから何度もクルブの守備陣を突破。左サイドを崩すと、右のWBのチャチュアが必ずクロスに合わせに走ってくるのも印象的であった。好調の森岡亮太は特に出色のパフォーマンスで、攻撃では4本のキーパスを通してチャンスを演出し、セカンドボールの回収やデュエルの強さで、守備でも存在感を示した。意外に思う人もいるかもしれないが、1試合平均のタックル成功数は4.4回とリーグで最多の数字である。クルブ相手でも十分戦えることを示し、60分あたりまではより勝利への高い可能性を感じさせたシャルルロワだったが、ヘディングシュートを放った際に相手DFと頭同士で接触したニコルソンが交代してからややトーンダウンしてしまった。

クルブは2節の後半から6節までの間は3バックを採用し、最前線にはラングとデ・ケテラーレのダブル偽9番というようなスタイルで臨んでいた。433とした前節もデ・ケテラーレが3トップの中央にいたのでCFとしての役割は薄かったが、この日はより9番らしく振る舞えるウェズレイが中央に。IHのフォルマーが欠場していたこともあって、いつもの片方のサイドに何人かが寄って起点を作り、そこから斜めに裏を狙いに行くというメインの攻撃パターンは少なめ。代わりに、IHで起用されたデ・ケテラーレが前を向いてボールを運びチャンスメイクをする回数が増え、チーム自体がいつもとは違った雰囲気を纏っていた。ただし新加入3トップは、前節大車輪の活躍を見せたソワーも含めて不発で、ムアッサはハーフタイムでお役御免。56分にはウェズレイを下げて守備的なMFのバランタを投入し、デ・ケテラーレの偽9番再び。終盤に向かうにつれて徐々に押し込み始め、アディショナルタイムにデ・ケテラーレの決勝ゴールが生まれてクルブが勝利した。

昨季はシャルルロワのホームでATにシャルルロワがニコルソンのゴールで追いつきクルブのリーグ戦連勝が10でストップしたが、今季はクルブがAT弾でシャルルロワの無敗を打ち破る結果となった。敗れはしたものの試合内容を見ればシャルルロワにとってネガティブなものではなく、今後も上位争いを賑わせるのではないかと思う。連勝で首位をキープしたクルブは、移籍市場がクローズする直前に獲得した選手が多く、これからCLとの二足の草鞋をこなして行く中で最適な組み合わせを模索して行くことになるだろう。

 

ハイライト


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シント・トロイデン 1-2 ヘンク

シント・トロイデン(STVV)ホームでのリンブルフダービー。2連勝中のSTVVは前節と同じメンバー。アウェイでのヘンクは、3日前にELのラピド・ウィーン戦を戦っており、さらに3日後には延期になっていた5節のアントワープ戦を控えているため、大幅なメンバーの入れ替え。今季初出場のオイエンや、開幕戦以来の出場となるトマなど、近頃出番の少なかった選手たちがスターティングラインナップに名を連ねた。ユース出身組を除くとスタメンでは最古参になる伊東純也がキャプテンマークを巻いた。

試合は序盤からSTVVが集中した守備を見せ、特に素早い帰陣とCHへの厳しいチェックを前に、珍しい組み合わせとなっているヘンクは思うように前進できなかった。オイエンやトレゾールの単騎での突破は見られたが、新加入のCFウグボを含め、意図が合わないことが多いように見えた。安定した守備をベースに、STVVはサイドを使った攻撃からゴールに迫るようになると、前半AT、林大地が右サイド深い位置でボールを収めると、サポートに来た橋岡大樹がダイレクトでクロスを上げ、中で上手くマーカーを外した鈴木優磨のヘッダーで先制に成功する。試合を通じて対人守備で積極性と強さを発揮していた橋岡が、攻撃でも結果を残した。

後半も序盤は鈴木のヘディングシュートなど惜しいチャンスがあったが、ヘンクがペイントシル、ヘイネン、オヌアチュの3人を同時に投入し攻勢を強める。左サイドからカットインしたペイントシルのシュートで同点に追いつくと、その10分後にはヘイネンのクロスをファーで伊東が折り返し、オヌアチュがキープすると長い体躯を活かしたシュートで逆転に成功。直前のELでも決勝ゴールを生み出したコンビでのゴールで、ヘンクが逆転しそのまま1-2で勝利した。

ヘンクにとっては、普段出場の少ない選手たちがあまりアピールできなかったが、連戦のさなかでローテーションを回しつつアウェイでのダービーマッチに勝利できたので十分満足だろう。水曜日に行われるアントワープ戦に勝利すれば、首位に浮上する。キャプテンマークを巻いてフル出場し公式戦2試合連続で決勝点をお膳立てした伊東は、試合後ロッカールームで珍しく(?)かなりテンションの高い様子がクラブの公式インスタグラムでもアップされていた。STVVはここで連勝がストップ。72分に追いつかれるまではいい試合運びだったが、そこから傾いた流れを食い止める余力がなかった。移籍騒動のあった鈴木優磨は自身今季初のホームゲームでヘンクからゴールを奪ったことで、ファンからの信頼を取り戻せそうだ。林大地もデビュー以来チームに欠かせない存在になっている。終盤にはこのところメンバー入りするようになっていた伊藤達哉が初出場を果たし、左サイドでいいプレーを見せた。タイプが被る選手が少ないので、今後も少しずつ出場時間を伸ばしていけるのではないかと思う。

 

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スタンダール・リエージュ 0-1 アンデルレヒト

ともに前節は勝利して臨むベルギー版クラシコ。熱狂的なサポーターの後押しを受けて、久々にライバル相手の勝利を掴みたいスタンダールだったが、CBに入ったアル・ダキルが開始わずか6分で自らのトラップミスをきっかけにフェルスハーレンを倒し退場してしまう。今季は433でスタートすることが多いスタンダールだが、432で守ることになる。退場劇からのドタバタを突いたのが、アンデルレヒトスウェーデン代表オルソン。今季のアンデルレヒトは、保持の局面でCHのカレンがCBの右脇に降り、左利きのCBフートがやや左に開いて、もう1人のCBハーウッド・べリスを底、CHオルソンを頂点においた菱形でビルドアップを安定させることが多い。この試合では立ち上がりからいつもより早いタイミングでカレンが移動し菱形を形成していたが、アル・ダキルの退場をきっかけにカレンではなくオルソンが右に移動する。すると早速12分に、スライドの遅れと人数不足で空いたライン間のスペースでフェルスハーレンがオルソンからボールを引き出すと、反転してラファエロフに渡し、ラファエロフが個人技でスタンダール守備陣を翻弄してゴールを奪う。得点以降はカレンとオルソンがまたいつものポジションに戻ったため、臨機応変な奇襲と言えるようなムーブでアンデルレヒトが先制に成功する。

前節メヘレン戦のようなゴールラッシュになるかと思われたが、その後は人数有利をアンデルレヒトがあまり活用できず、テンポの上がらないパス回しの間にスタンダールのFWが守備に戻ってしまって攻めあぐねる展開が続いた。SBのセルヒオ・ゴメスとムリージョの左右を一時的に入れ替えるといった工夫も見られたが、これも特に効果はなし。後半に入ると、ティフォージの後押しを受けたスタンダールに攻め込まれる回数も増えてきてしまう。スタンダールのCHラスカンは、CBの補充のために13分で退いたツィミロットの分まで、まるで2人いるかのような働きを見せた。同点までもうひと押しというところまでは迫ったスタンダールだったが、残り10分で途中出場のファイも退場処分を受けてしまい万事休す。クラシコの舞台を装飾するに相応しいスタジアムの特別な雰囲気とは裏腹に、ピッチ上の人数が減ってしまって寂しい最後となってしまった。大勝したメヘレン戦に引き続き内容にはやや不満が残るものの、アンデルレヒトクラシコにも勝利し連勝。ミッドウィークに延期分のヘント戦があり、その後はオーステンデ、クルブとの対戦が待っている。10月の代表ウィークまでの3試合で、今のアンデルレヒトの現在地がはっきりしてくるのではないだろうか。

 

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セルクル・ブルッヘ 1-2 オイペン

開幕からの好調が途切れてしまっていたオイペンはここで連敗ストップ。上位に踏みとどまった。先制点を奪ったカイェンベ、勝ち越し点を奪ったアグバドゥは、今季ここまで安定したパフォーマンスで攻守にチームを支えている。

 

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オーステンデ 3-1 ベールスホット

2節からの3連勝の後、一転して3連敗と今季は波のあるオーステンデ。シーズン開幕後にDFの主力テアテとヘンドリーが移籍したこともあってチームの再構築を迫られているが、今節は開始わずか7分で2点のリードを奪って快勝。前節STVVに敗れペーテル・マース監督が退任したベールスホットだが、勝利は遠くこれで6連敗。鈴木武蔵は3節のUSG戦以来のスタメン復帰を果たし、今季初めてのフル出場。

 

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ユニオン・サン・ジロワーズ 2-1 ズルテ・ワレヘム

前節ドローで首位の座をクルブに明け渡したUSG。ただしアウェイでの強豪ヘンク戦、退場者を出しての戦いということでネガティブな雰囲気はなし。後半にエース、ウンダフのゴールで先制すると、その後追いつかれるものの85分にソリノラがUSG加入後初ゴールを奪って競り勝った。三笘薫は73分から出場し、ホームでのデビューを果たした。ズルテは印象とは裏腹に勝ち点がついてこない。開始9分で中盤の肝であるアブドゥライェ・シサコが退場して試合を厳しくしてしまった。なお、前節はスタンダールに所属する弟のムサも退場処分を受けている。

 

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メヘレン 2-0 ルーヴェン

ホームのメヘレンが前節7失点大敗のショックを払拭する快勝。かつてルーヴェンに所属していたメヘレンのニコラ・シュトルムは先制点を奪い、これで4戦連発。

 

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アントワープ 2-1 スラン

カウンターからジョージア代表ミカウタゼに決められスランに先制を許したアントワープだが、得点ランクトップを走るミヒャエル・フライが1ゴール1アシストの活躍で逆転し今季初めての連勝。DAZNでの試合配信がなかなかされない間に、三好康児はしっかりポジションを確保し、70分までプレー。水曜のヘンク戦が楽しみだ。

 

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コルトレイク 1-0 ヘント

開始10分で得たPKを、今季好調のスレマニがパネンカで落ち着いて沈め先制したコルトレイクが、GKイリッチを中心にヘントの猛攻を凌ぎそのまま勝利。ヘントは2連敗。代表ウィークを挟んでしまった影響か、6節のクルブの大勝を復調に繋げられておらず、消化試合数が1試合少ないとはいえ16位に沈んでしまっている。

 

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21/22 ブンデスリーガ 4節 メンヒェングラードバッハvsビーレフェルト

代表ウィーク明けの初戦は、2連敗中で未だ勝利を挙げていないグラードバッハのホーム、ボルシアパークに乗り込む。同州対決だがビーレフェルトとメンヒェングラードバッハは200kmほど離れているので、ダービーという趣はない。ビーレフェルトは今季ここまで3戦連続ドローで、勝利こそないものの無敗。昨季から通じてブンデスリーガでは6戦連続無敗(といっても1勝5分だが)。ビーレフェルトが最後に負けた試合が、4月末に行われた昨季の31節、ここボルシアパークでのグラードバッハ戦で、5-0の大敗を喫している。グラードバッハ戦は直近11戦勝利がなく、アウェイ戦は過去に1勝したことがない。苦手意識で溢れているが、相手の不調にかこつけて記念すべき1勝を狙いたい試合であった。

 

先にスタメン。

 

ビーレフェルト

オルテガ、デ・メディーナ、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、プリートル、シェプフ、ヴィマー、ハック、奥川、クロース。

 

フランクフルト戦の442を継続。ピーパーが足首の軽い怪我でメンバー外、デ・メディーナが右のCBに入る。出場停止明けのシェプフがスタメンに復帰し、CHに。前節同点弾のヴィマーが右のSHで今季初先発。奥川雅也はクロースとの2トップのような形に。

 

グラードバッハ

ゾマー、ギンター、バイヤー、エルヴェディ、スキャリー、ネッツ、ザカリア、ノイハウス、ホフマン、シュティンドル、プレア。

 

新型コロナ陽性でウニオン戦を欠場したギンターが復帰し、この日は3バックに変更。アルジェリア代表に招集されていたベンセバイニが代表活動中に怪我を負い、左のWBにはネッツが入る。ザカリアが今季初先発。

 

 

応援しているチームの試合で、悔しいと感じたことは久しぶりかもしれない。冒頭でも述べた通りビーレフェルトにとっては相性の悪いカードであり、昨季は残留争いのクライマックス、ビーレフェルトも勢いが出てきたタイミングでものの見事にボコボコにされたのは4月の出来事なので、記憶に新しい。好きな選手であるが、前回対戦でビーレフェルトのブロックを破壊するミドルパスを再三繰り出していたマティアス・ギンターの顔を対戦相手として見るのは少し苦々しい。ただし、昨季は昨季。今はグラードバッハの調子が上がらず、対してビーレフェルトは前節フランクフルト相手にポジティブな戦いぶりを見せた。ここでCL出場圏内が目標となるようなチームを叩ければ、ビーレフェルトにとっては今季も残留が最大のミッションとはいえ、一気に視界が開けてくるのではないか。やや野心的な願望は脇に置いても、いかに内容が良くても4戦連続勝利なしというのも少し心許ない。ということで、現実的に勝利を望む気持ちがチームも、ファンも、大きかったのではないかと思う。

 

 

最初の2試合は3バックの相手に4312で挑みプレッシングがあまり機能しなかったが、前節は4バックのフランクフルト相手に442で一定の成果。この日も同じ442で、中盤ラインがほぼハーフウェイライン前後にいるくらいの位置で全体のブロックを保ち、グラードバッハに対して引きすぎずにプレッシングをしていった。ここまで4バックで来ていたグラードバッハが3バックにすることを読み当てていたかは定かではないが、ギンターが復帰すること、ベンセバイニが欠場することはわかっていたので、少なくとも3バックへのシフトチェンジの可能性もある程度は想定していたと思われる。クロースを中央に、奥川が左HVのエルヴェディをチェックし、右HVのバイヤーに多くボールが渡るように誘導していた。バイヤーにボールが渡ると右SHのハックがカバーシャドウでWBもしくはCHへのコースを切りながらプレスに行く。CHのザカリアとノイハウスに対してはシェプフとプリートルが目を光らせているため、中央を割られることは少なかった。ハックが前に出て行く分グラードバッハの右WBスキャリーは空きがちだが、ここはハックが二度追いするか、あるいはクロースが気を利かせて戻ることで、序盤はケアできていた。クロースと奥川の2トップは特にHVにボールが渡り角度がついた時に、CHへのコースをケアする意識がかなり強かったと思う。これまでの反省を踏まえて、非保持の局面にしっかり修正を施していることが窺えるのは心強い。

 

ただし、こうして守備組織を整備して臨んでも、90分間を通して同じアプローチを続けることは難しいし、ブンデスリーガのような舞台では当然相手も様々な工夫を凝らしてくる。16分には、ホフマンがDFラインまで降り、それをシェプフが左から追いかけたが、キーパーのゾマーを使って回避され、逆にビーレフェルトのゴール前まで運ばれてしまう。さらにグラードバッハはこれくらいの時間帯から、ザカリアもしくはノイハウスをDFラインまで落とし、右HVのバイヤーをSBのように開かせ押し上げることで、ビーレフェルトのプレッシングの基準点を意図的にずらしにくる。ビーレフェルトの前線は対応に戸惑っているところで、今度は3バックを保ち、ハックが出づらくなって余裕を持てたバイヤーがドリブルで運んでいく。20分には、無理にボールを奪いに行ったヴィマーがネッツに剥がされ、前線にボールを送られると、一度は奪い返すもニルソンにミスが出て、シュティンドルからパスを受けたプレアにネットを揺らされる。これは幸運にも、シュティンドルからプレアのパスがオフサイドだったためゴールとならなかったが、シュティンドルが自らシュートを放ってもいいような場面だっただけに、まさに命拾い。その後はややオープンな展開になってくるが、前からしっかりと縦へのルートを牽制しつつプレッシャーをかけているので、強引に前線に通してきた場合もニルソンやデ・メディーナがしっかりと前に出て対応できる。デ・メディーナは本職でないCB起用ながら安定感があり、ニルソンも今季は強さを発揮する機会が多い。この時間帯は、守備はどうにか保てていただけに、奪った後に縦に急ぎすぎてしまう傾向さえなければ、もう少し試合をコントロールできたかもしれない。流れを引き寄せきれず、34分にプレッシングを外され失点してしまう。シュティンドルのシュートがラウルセンにディフレクトして入ったものなので不運ではあったが、サイドを振られネッツに運ばれ、中央のスペースも開けてしまっていたので致し方ないか。プレアのオフサイドのシーンは僥倖といった具合なので、ツキという観点でも帳尻があってしまったか。

 

前半の残りの10分は、オープンな展開は分が悪いとはっきりわかったのでプリートルやシェプフが引き出して落ち着かせる場面が目立つ。守備でも4-4のブロックを組んで我慢強く陣形を保つことを優先するようになる。焦れたノイハウスが強引に出した縦パスをプリートルが奪ってスルーパス。奥川が抜け出し、ゾマーと1vs1に。今季はなかなか決定機を決めきれない奥川くん。一度はゾマーに止められてしまうが、跳ね返りを冷静に押し込み、一度は副審の旗が上がるもVARのチェックの結果ゴールが認められ、同点に追いつく。昨季は前半で勝負が決してしまうような試合が多く、18分で3失点した4月のグラードバッハ戦もまさにその一例であったが、先制点を許しても崩れず、終了間際に追いついてハーフタイムへ向かえるあたりは、昨季との大きな違いだ。

 

後半は、HVには両SHが出て、奥川とクロースのどちらかがしっかりとザカリアを消す、という意識が強まる。前半と比較してヴィマーが相手の最終ラインまでプレスに出て行く頻度が上がったので、ヴィマーが飛び出して空いたスペースを埋める作業に、クロースが前半にも増して追われることになる。4-4でブロックを作れば、降りるCHを捕まえに前に出るシェプフとプリートルの空けたスペースを、ハックが絞って埋める。前半よりもコンパクトさを保つ意識と、連動性が向上した。前半よりも 消耗の度合いが大きそうだが、しっかりと守れるようになったビーレフェルト。しかし、グラードバッハの左WBネッツが足を痛めて退いたところから流れが少し変わってしまう。ヒュッター監督はネッツに代えてヘアマンを投入。スキャリーを左に回し、ヘアマンは右のSHに入って、4バックに変えてくる。DFラインは、右のSBから、バイヤー、ギンター、エルヴェディ、スキャリーという並びに。3バックの時と同じようにヴィマーがエルヴェディに食いつくと、スキャリーが空いてしまう。左のハックは上手くカバーシャドウで消しながら寄せ、あるいはSBに出されても自分がさらに追いかけられるような距離感、角度でアプローチにいけるが、ヴィマーはまだ背後をケアしつつホルダーに寄せるほどの能力はない。外で待つスキャリーに展開されると、クロースが戻ってきてくれるのだが、スキャリーにドリブルされるとそれにまでついて行くことはさすがに求められない。この試合は気を利かせて様々なスペースにヘルプに行く印象のあったクロースだが、消耗が激しくなってきてしまう。

 

グラードバッハのシステム変更で崩れ始めたビーレフェルトの守備のバランスは、69分に決壊する。グラードバッハのバックラインでのパス回しで、左から右へとボールが動き、ギンターからSBのバイヤーにボールが出て、ハックがチェックに行く。ギンターの縦のコースを消していた奥川は、そのままバイヤーの中へのコースを切りたかったが、ここが奪いどころと判断し、バックステップでスペースを作りリポジショニングするギンターについていってしまう。奥川としては、CHへのコースはクロースが封鎖している腹づもりだったのだろうが、クロースは絞りきれておらず、中央のベネスにフリーで通されてしまう。ザカリアをマークしていたシェプフが慌ててベネスに寄せるが、ザカリアはその隙をついてシェプフの視界から消えて右サイドの外へ。ベネスがフリーのザカリアにつけると、サイドでヘアマン&ザカリアvsラウルセンの2vs1。ザカリアは外のヘアマンを使って、ヘアマンからのクロスをシュティンドルに決められてしまう。不調といえども、各国代表クラスのタレントが揃う強豪グラードバッハ。一瞬の隙を突かれて勝ち越しを許してしまう。直後にはザカリアの個人技でプレッシングをかわされ、またもヘアマンの折り返しに今度はザカリア自身が合わせて2点差。ここで試合の趨勢は決してしまった。

 

強豪相手にしっかりと食らいついていっても、少しの隙を見逃さずに仕留め切る力、最後に違いを生み出すタレント力、こういった力によってねじ伏せられてしまうという悔しい試合になってしまった。前節大暴れのヴィマーはこの試合も馬力十分で躍動したが、守備での不安定さを考えるとグラードバッハが4バックに変えたタイミングで手を打つべきだったというのは結果論だろうか。守備に奔走したクロースは失点のシーンでいてほしいところにいられなかったし、今チームを地味に支えているハックは、終盤疲れ切って決定機をフイにしてしまった。

 

こうして悔いの残るポイントを書き並べると、ネガティブな印象を受けるかもしれないが、実はそうではない。昨季のこの時期は絶賛7連敗中。上位チームばかりとの対戦という日程上の悪条件はあったが、そのほとんどが前半に失点を重ねて試合が死んでしまい、いつも同じような展開なので、久しぶりの1部の舞台で、誰が、何を、どの程度ブンデスリーガでやれるのか、ということを知ることすらままならなかった。2点差以上がつけば、あとはロクに反撃もできずただ負けるだけだった。4試合終えての勝ち点3は、昨季よりも1少ない。しかし、この日はグラードバッハ相手に70分間互角に戦い、チームとしても個人としても様々な収穫や課題の発見があった。3点目を失ったあとも、折れずにゴールを目指し続けることができた。ポジティブな発見の例をあげると、CBで起用されたデ・メディーナ。昨季はSBとして、ブンデスリーガで十分戦えるようなパフォーマンスではなかった。しかし今節は本職ではないCBで起用されながら、プレアやヴォルフ相手に引けを取らず、攻撃でも積極的に組み立てに関与し、ボールを前に運ぶ姿勢を見せた。

 

これから先も、ホッフェンハイム、ウニオン、レバークーゼンが対戦相手として待っている。ビーレフェルトはやっとのことで残留した昨季とは違うということを結果で証明するにはいずれも不足のない相手であるが、残念ながら今節のグラードバッハ戦はその時機ではなかった。それを心の底から悔しいと思うと同時に、敗れて真剣に悔しさを感じられることに満足感もあるのである。

 

 

 

ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 7節

ベルギー1部、ジュピラー・プロ・リーグの7節の結果を、DAZNで配信された4試合を中心に振り返り。各試合のハイライト映像のリンク付きなので、そちらもぜひ。

 

 

クルブ・ブルッヘ 3-0 オーステンデ DAZN

ここまで不安定ながらも5節までは無敗で勝ち点を積み上げてきたクルブだが、前節は守備が崩壊しヘントに6失点と大敗。代表ウィーク明けの今節は2節まで用いていた4バックに再度シフトチェンジし、立て直しを図る。右サイドには昨季までルーヴェンで活躍し、保有元のレスターから€9mで8月末に買い取ったソワーが移籍後初出場。CBは出場停止明けのンソキと、オーステンデから獲得し、デビュー戦がいきなり古巣対戦となったヘンドリーが入った。3人とも出場はなかったが、2日前のミンスクでのW杯予選に帯同したデ・ケテラーレとヴァナーケンは先発し、メヘレはベンチスタート。

この試合に関しては4バックへの変更は成功。前節まで散見されたインサイドハーフが相手CBまでプレッシングに行ってあっさり外され前進を許すシーンや、3バックでは概ね右WBを務めるクリントン・マタの背後を突かれCBがサイドに釣り出せるようなシーンは消滅。攻撃では、これまで右サイドはマタが攻め上がるか、ヴァナーケンやフォルマーが流れて起点を作ったが、ここはソワーが新たに右ウイングに入ったことで幅が出せるようになった。先制点のシーンは、右サイドで開いてボールを受けたソワーが左サイドに展開し、相手DFラインの背後をとったノア・ラングが決めたもので、システムチェンジに伴う新しい攻撃のパターンが早くも形になった。後半にはソワーとマタのコンビネーションで右サイドを攻略し、W杯予選で活躍したヴァナーケンの2試合連続ゴール。さらにラングのこの日2点目がまたも右サイドの崩しから生まれて3-0。難敵オーステンデ相手にヘント戦のショックを払拭するには十分な試合となった。

一方オーステンデ。ここまでは派手な試合を多く演じて上位に顔をのぞかせていたが、この試合はいいところなし。ボールを握られて押し込まれる時間が長く、奪っても簡単にパスを引っ掛け失うシーンが目立ち陣地回復もままならず。ゲイェとクヴァシナの2トップはターゲットとして強力だが、チームとしてクルブに脅威を与えるには至らなかった。前半終了間際には新加入でデビュー戦のフォルテスが3分間で2度警告を受け退場。10人になり、クルブに危なげなく試合を運ばれいいところなく完敗。9月に入り契約を延長したばかりのブレッシン監督だが、開幕後にテアテとヘンドリーが去ったバックラインの再構築には頭を悩まされるかもしれない。

 

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アンデルレヒト 7-2 メヘレン DAZN

復権を期すアンデルレヒトだが、今季もスタートダッシュに失敗。カンファレンスリーグでもプレーオフフィテッセに屈して出場を逃してしまった。一刻も早く巻き返していきたいところだが、この試合も前半は苦戦を強いられる。後方から組み立てようとすればメヘレンのハイプレスに対して思うように前進できず、どうにか陣地を回復しセカンドボールの回収から保持を落ち着かせても、今度はソリッドなブロックを崩せず。逆にボールを失えば、高い位置まで攻撃参加するSBが不在のサイドのスペースを活用され、メヘレンの攻撃を存分に食らってしまう。メヘレンディフェンダーのポジショニングミスを突き、ラーマンのゴールで先制に成功するも、やはりサイドの裏を使われ追いつかれてしまい、ポゼッション、シュート数ともにメヘレンを下回って1-1で前半を折り返す。

ところがエンド変わって後半、最初の45分間からは到底想像できない光景が繰り広げられる。49分のクアメのゴールを皮切りに、ショートカウンターで次々加点。メヘレンにボールを渡してしまって中盤で奪うと前線のアタッカーたちのスピードを活かし、面白いように点が入った。前半のベター・サイドだったメヘレンが後半初めてシュートを放った時点ですでにスコアは6点差。アディショナルタイムにカヤが直接FKを決めて1点を返すのが精一杯だった。

アンデルレヒトとしては、特に前半の戦いぶりからは依然不安定さを覗かせたものの、次節スタンダールとのクラシコに向けて弾みのつく勝利と言えるだろう。対してメヘレンは今季4敗目で17位にまで転落。途中までは悪くない試合運びだったが、そのポジティブな感触も完全に吹き飛んでしまうようなショッキングな結果となってしまった。

 

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アンデルレヒトの4点目、ムリージョのゴールはよく見ていただきたい。

 

 

ヘンク 1-1 ユニオン・サン・ジロワーズ DAZN

気づけば3連勝と調子づいてきたヘンク。代表や怪我の影響で合流が遅れた選手もいたが、ここにきて役者が揃ってきたという印象がある。対するUSGは前節首位に再浮上し、リーグ内で今季最も勢いのあるチーム。USGが勝ち点12、ヘンクが1試合未消化で勝ち点10ということを考えれば、事実上の首位決戦とも言ってもいいかもしれないビッグマッチであるが、大味な内容に。ヘンクがボールを持ち、USGは持ち味である速い攻撃で反撃の機会を窺うというような展開がほとんどであった。試合を通じて双方それなりの数のゴールチャンスを作ったが、例えばヘンクの前節アンデルレヒト戦のような緊迫感ではなく、単に決めきれない印象が強かった。そんな試合でインパクトを残したのが、USG加入後初のメンバー入りを果たした三笘薫。1点ビハインド、かつ10人の80分に投入されてベルギーデビューを果たすと、左サイドでドリブルを活かしチャンスメイク。アディショナルタイムには、CKでそのままキープしようとするヘンクのトレゾールからボールを奪い前方へ。ここから得たCKをウンダフが決め、土壇場で同点に。三笘のボール奪取から生まれた同点劇と言っていいだろう。

アウェイでヘンク相手に退場者を出しながらのドローとあって、首位からは陥落したもののUSGは大盛り上がり。ヘンクは勝ってELにはずみをつけたいところだったが、最後の最後で勝ち点2を失う結果に。今季はCKからの失点が多いので、ここは改善が必要だろう。

 

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ベールスホット 0-1 シント・トロイデン DAZN

ここまで7試合チームを牽引してきたムボヨがヘントに移籍し、一方で移籍が既定路線だった鈴木優磨が急転直下チームに残るなど、予想外の形で9月を迎えたシント・トロイデン。林大地、原大智が加入し、在籍する日本人選手はクラブ史上最多の7人となったが、この試合ではその7人全員がメンバー入りを果たした。シーズン序盤は不安定さが目立っていたシント・トロイデンであるが、3バックの中央にテイシェイラが入り、さらにコナテが前節から復帰して中盤の底に入ったことで、保持時の停滞感や、全体的なポジショニングのアンバランスさが改善されてきている。加えて今節は新加入のライストナーがデビュー。初戦ながらキャプテンを任され、3バックの一角に加わりDFラインはさらに強化された。前線は前節デビュー戦で決勝ゴールを奪った林大地と、今季初出場の鈴木優磨が2トップ。この2人がプレッシャーをかけてボールを奪い、林大地がドリブルで運んで、デ・リダーの決勝ゴールをアシストした。原大智は前節セルクル戦に引き続き1点リードの終盤に投入されたが、いいアピールは出来ず。スタートから起用される機会があれば変わってくるかもしれないが、現状では首脳陣の信頼を勝ち得るまで少し時間がかかりそうである。シュミット・ダニエルはさすがの安定感で今季3度目のクリーンシート達成に貢献した。

一方のベールスホットは7節終えて1分6敗で唯一の未勝利チームとなってしまい、17位とは勝ち点6差で最下位。前節はDFラインに2人の退場者を出したが、この試合では前半で右WBのドムと新加入のCBレモスが負傷交代と負の連鎖が止まらない。週明けにはペーテル・マース監督の解任が決定。このところ出場機会を失っていた鈴木武蔵は、新しい監督の下チーム復調に貢献することを期待したい。

 

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オイペン 0-1 アントワープ

スカッドが揃って軌道に乗り始めたアントワープ。前線は陣容が大きく入れ替わったが、三好康児もEL予選でアピールに成功してポジションを確保している。このところDAZNでの配信がなく少し残念である。

 

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ズルテ・ワレヘム 2-4 セルクル・ブルッヘ

セルクルが後半2点差をひっくり返して開幕節以来の勝利。フォッセンを出場停止で欠いたズルテ・ワレヘムはホームで手痛い逆転負け。

 

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ヘント 2-3 シャルルロワ

前半にゴリザデが退場し、2点差を追いつかれながらもアディショナルタイムに突き放し勝利したシャルルロワは、リーグで唯一無敗をキープし3位浮上。決勝点は前節からキャプテンマークを巻く森岡亮太が演出した。DAZNで中継していてほしかった。

 

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スラン 0-1 スタンダール

25年ぶりに実現したリエージュ・ダービーはスタンダールの勝利。前節大敗のショックを払拭して次節アンデルレヒトとのクラシコに向かうが、CBムサ・シサコが退場し出場停止となるのは不安材料か。

 

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ルーヴェン 2-1 コルトレイク

好調のコルトレイクに競り勝ち、ルーヴェンが待望の今季初勝利。なおルーヴェンだけ今季はDAZNでの配信がまだない。

 

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