ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 13節

 

 

シャルルロワ 3-0 オイペン

2連勝と2連敗、対極的な状況にある、勝ち点20で並ぶ両チームの対戦。最初の15分は連敗を止めたいオイペンがペースを握ったが、徐々にシャルルロワがチャンスを増やすようになる。どちらのチームもあまり前からボールを奪いにいくことをしなかったが、森岡亮太ゾルガン、ゴリザデと推進力のある選手が揃い、シンプルかつ正確に前方にボールを送れるシャルルロワの方が能率的に前進することができ、前半はスコアレス、保持率もほぼ互角ながらシュート数では10vs1と大きな差が開いた。左右のHV、クネゼビッチとファンクレーンプトの持ち運びも効果的であった。

後半はプレヴリャクが抜け出して決定的なシュートを放つなどオイペンにもいいチャンスが生まれたが、残り15分を過ぎるまで両チームに得点なし。ようやく試合が動いたのは78分、シャルルロワは相手陣地左サイドでのスローインから、一度DFラインを経由してサイドチェンジ。右サイドからゼダッカPA内に侵入するとゴリザデへ絶妙なスルーパス。ゴリザデのシュートは防がれたがニコルソンが押し込んで先制に成功。5分後に、今度はニコルソンが左サイドで粘ってゴリザデに通すとゴリザデが1人かわしてシュートを放ちゴール。シャルルロワは4試合連続でニコルソン、ゴリザデのアベックゴールが生まれている。87分にはカウンターでファンクレーンプトが運び森岡に預けると、森岡がループパスでキーパーの前に”セット”し、走り込んだファンクレーンプトが決めて3-0。試合を決定づけた。

3連勝を果たしたシャルルロワは5位に浮上。森岡は3点目のアシストだけでなく、オーバーヘッドでのシュートやスルーパスなどでチャンスを演出し続けた。一方のオイペンは首位に立ってから3連敗。直近の2試合では、非保持で奪うタイミングやブロック形成の位置などあまり統制がとれてないように見える。

 

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シント・トロイデン 1-2 クルブ・ブルッヘ

最近は引き分けが先行するクルブ・ブルッヘは、バス・ドストを2節ユニオン戦以来の先発起用。今年1月、クルブでのデビュー戦もここスタイエンでのSTVV戦で、前半に先制点をゲットしたドストが、この日は開始40秒で起用に応えるゴール。今季リーグ戦では開幕節以来ゴールがないどころか、出場機会もほとんど得られなかった鬱憤を早速晴らした。1点を奪ったあとも、クルブはドストを中央に、この日はラングが右、デ・ケテラーレが左に入った3トップで簡単に相手の5バック釘付けにできるためSTVVのプレスを苦にせずボールを運べた。STVVは手も足も出ないかと思われたが、22分原大智が中盤に降りて引き出し、ターンして20mほど1人で運ぶとバランタに倒されファールを受ける。このFKからこの日はアンカーに入ったバウアーがボレーを決め、ほとんどチャンスを作れていなかった中で同点に追いつくことができた。

そのまま前半を耐え凌いだSTVVは、後半の最初こそ攻め立てたが、奪いきれず49分に勝ち越しゴールを許す。ソボルのクロスから、ドストがこの日2点目となるヘッダーを決め、これが決勝点となった。

STVVは、前節ルーヴェン戦、ミッドウィークのリーグカップ、スラン戦に続いて公式戦3連敗。格上が相手ではあったが、9月からのいい流れが一旦途絶えた。この試合ではコナテと、出場停止のライストナーが欠場。コナテはここまでチームの好調を牽引してきた存在だが、あまり不在の痛さは感じられなかった。原と林大地の日本人2トップは一旦解体され、原とブリュースが最前線に。原はインパクトのある結果を残しているとは言い難いが、同点に追いつくきっかけを作ったし、ボールを引き出すタイミングは確実に周囲と合い始めている。少し下がって受けようとすることが多すぎるように思うが、フルタイム出場が続いているので、その点は許容されている、あるいはチームオーダーとして求められている役割なのかもしれない。橋岡大樹は後半セットプレーから惜しいヘッドを2本放つなど見せ場を作った。

クルブは手堅く勝ち切り2位をキープ。前線のテコ入れとも取れる、久しぶりのドストの起用自体に特筆すべきものはなかったが、2ゴールと何より大事な数字を残したので今後は出場時間が増えるだろう。それ以上に、サイドに回ったデ・ケテラーレが普段より躍動していた。ノア・ラングが次節は累積警告で出場停止なので、スタンダール戦は前線の選手起用にも注目したい。

 

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ズルテ・ワレヘム 2-6 ヘンク

リーグ戦3連敗、ELでも2連敗と急に勝てなくなってしまったヘンクだが、この試合は4得点を演出した伊東純也の大活躍もあって6得点と気持ちよく勝てた。

ズルテ・ワレヘムの攻撃の中心は、左WBドンぺの突破力を活かしたサイドアタックだが、ヘンクはSB、WGに加え、トルストヴェット、ヘイネンのIHがフォローに入ることでサイドでの攻防を優位に進め、試合のペースを握った。先制点は12分。伊東が中央で一旦下がって引き出しはたくと、そこからスピードアップ。最後はムニョスの折り返しを自ら決めた。先述の通りズルテ・ワレヘムの攻撃の要はドンぺであり、そこに多くボールが集まるため、それを逆手にとってドンぺの空けたスペースで伊東がボールを受ける回数が多くなった。ドンぺの突破自体は、右SBムニョスがかなり止めていたので、ヘンクがそこから大穴を開けられるということもなかった。前半終了間際には、伊東が右サイドから中央にパスを送ると、トルストヴェットが綺麗なターンからゴールを奪い、2-0で前半を折り返す。

後半も開始早々に、伊東のクロスからオヌアチュがヘディングを決め、伊東は2アシスト目。さらに52分、ムニョスのスルーパスを受けた伊東がデ・ボックをかわしてクロスを送ると、最後はヘイネンが押し込み4点目。直後にもコーナーからルクミが決め、54分で0-5と大量のリードを得た。伊東は70分にもポストを直撃するシュートを放つなど、大量得点を奪ったヘンクの中でも大きな存在感。本人のインスタグラムによると、「最近は調子があがってhappy」で、毎年手袋をつけ始めると調子があがってくる説が浮上しているらしい。

ズルテ・ワレヘムは63分、ドンぺがようやく本領発揮。サイドを突破しクロスを上げるとフォッセンがダイレクトボレー。ドンぺはリーグトップの9アシスト目。フォッセンもリーグ3位タイの9ゴール目。さらにクテサもゴールを決めて3点差にしたが、ヘイネンにとどめを刺され万事休す。シャルルロワ戦後に伊東に苦言を呈したとされ、日本のサッカーファンの不興を買っってしまった感のあるヘイネンだが、キャプテンの意地を見せる2ゴールの活躍だった。

伊東の大活躍は日本のサッカーファンとして嬉しい限り。今季はチャンスを作っても数字に結びつかない印象があったが、久々のゴールを奪えたし、アシスト数も6に伸ばしてリーグ3位に並んだ。ヘンクについて個人的に嬉しいのは、お気に入り選手の1人であるフロショフスキーの活躍。今季は出番が少なく、チームがターンオーバーして臨んだSTVVとのダービーでは低調なパフォーマンス。スロバキア代表でも控えに甘んじることが多くなってきていて、今季は厳しいかと思っていたがここ数試合ヘンクでは先発が続きついに勝利に結びついた。ターンが上手く、パスは正確で、カットインしてきたウインガーへの寄せ方が秀逸な選手なのでぜひ注目してほしい。

ズルテ・ワレヘムは、ドンぺ、フォッセンを筆頭にガノ、シッサコ、プレティンクスなどかなりのタレントが揃っている印象があるが、今季はなかなか勝てない。特にWBに配置しているドンぺが諸刃の剣となってしまうような格上との対戦では、試合の中で守備の弱点をかくせるような柔軟さが必要だろう。

 

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ヘント 0-2 ユニオン・サン・ジロワーズ

オイペン、ヘンクを撃破し上位に追いついてきたヘント。ここで首位USGを食えばいよいよ今後のリーグ上位争いのメインキャスト候補に一躍名乗りをあげられるところだったが、一方的に試合を支配しながらもゴールが遠く完封負け。6-1で勝利したクルブ戦や、10人になるまでは完璧に支配していたアントワープ戦のように、ハイラインとハイプレスでボールをほとんど相手陣地から出さず、波状攻撃を続けた。最初の特に前半はUSGに2本しかシュートを打たせず、ポゼッションも70%を誇ったのだが、ンガドゥのヘディングシュートがバーに当たったり、オディジャ・オフォエがPKを失敗したりと決め切ることができなかった。後半は途中からキープ力に優れヘンク戦では独力でゼロからチャンスの起点になっていたベズスを投入したが、活かし切ることができなかった。

一方厳しい展開ながら試合巧者ぶりを発揮したのがUSG。最初の5分間はチャンスの可能性を一切感じなかったものの、カウンターから6分にウンダフ→ファンゼールのホットラインでゴールを奪って先制、前半終了間際にはテウマがPKを決めて加点した。オイペン戦に引き続きWBで先発出場した三笘薫は、高い位置でボールを受けて仕掛ける、という場面を得られなかったものの、長距離を単独で持ち運び陣地を回復できるドリブル能力が守勢に回りがちな試合展開の中で存分に活かされていた。40分のPKも、三笘がロングカウンターでボールを運び得たFKから、相手のハンドで得たPK。75分にソリノラが投入されると三笘はFWに移り、さらにその5分後に交代で退いたが、この2試合の三笘のプレーを見ていると、WBで起用されているのはその突破力を活かしたいというよりも、WBとしてのタスクをこなせるとマッズ監督に判断されているから。守備のタスクを軽減されているというようなことはなく、いい意味で「特別扱いされず」起用されているように思われる。守備面での課題は今後狙われることで新たに噴出する可能性もあるが、今後もWBとして継続的にいいパフォーマンスができればベルギーに来たことでプレーの幅を広げられるということになりそうだ。

 

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スタンダール・リエージュ 1-1 コルトレイク

苦しい戦いが続くスタンダールと、プレーオフ圏内に食らいつきたいコルトレイクのゲームは痛み分けに。スタンダールはこれで3試合連続のドローだが、その前に3連敗を喫しているのでトータル6試合勝ちがない。

 

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オーステンデ 2−4 メヘレン

メヘレンアンデルレヒト戦の大敗以来6試合で5勝1分と絶好調。得失点差もついにプラスへ転じ、勝ち点23でPO1圏内の4位に浮上した。10月はムラブティが好調で、4試合で4ゴール1アシスト。波の激しいオーステンデは痛い連敗。次節ルーヴェン戦はプレーオフ争いに残っていけるか分水嶺になる。ゴールを奪ったマクタル・ゲイェは今季9点目だ。

 

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ベールスホット 3-0 スラン

13試合目にして、最下位ベールスホットが待望の今季初勝利。22分にホルツハウザーがスランのキーパーからのパスをインターセプトしゴールを奪うとそのリードを終盤まで守り、残り10分となったところでヌビシが連続でゴールを奪い大勝した。敗れたスランは3連敗。

 

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セルクル・ブルッヘ 0-1 アントワープ

アントワープが苦しみながらも、PKでの1点を守り抜き3試合ぶりの勝利。決勝点のフライは今季13ゴール目。セルクル・ブルッヘは前節連敗こそ止めたものの6試合勝利なしとトンネルに入ってしまっている。

 

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アンデルレヒト 2-2 ルーヴェン

引き分けの多い両チームの対戦は、案の定ドロー決着。1人少ないアンデルレヒトが後半ATにジルクゼーの2点目で追いつき、その後アシメルがハンドで退場し、ルーヴェンにPK。しかしこれをカバが決められず、両チームの高い”引き分け力”を感じさせる試合となってしまった。アンデルレヒトはリーグ戦直近6試合のうち5試合引き分け。リーグ最多8つ目のドローとなったルーヴェンは直近5試合のうち4試合が引き分けである。

 

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