21/22 ブンデスリーガ 8節 アウクスブルクvsビーレフェルト

前節はレバークーゼンに大敗し、後味悪く代表ウィークに突入してしまったビーレフェルト。今節はアウクスブルクとのアウェイゲームだが、ビーレフェルトアウクスブルクブンデスリーガで未勝利。アウクスブルクはここまで1勝2分3敗で勝ち点5。順位はビーレフェルトより1つ上の15位。相性は悪いが、ビーレフェルト同様今季はここまで苦しんでいる相手なだけにここは必ず勝ち点を積み上げたいところであった。

 

ビーレフェルトのスタメンは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、ヴィマー、プリートル、クンツェ、ハック、奥川雅也、セラ。

2週間前に行われた前節レバークーゼン戦からの変更は3人。左SBはチボラに代わりラウルセンが復帰。シェプフがベンチスタートでクンツェが3節フランクフルト戦以来のスタメン。FWはクロースが今季初めて先発を外れ、このところ出場の少なかったセラがビーレフェルトでは初めてのスタメン入りとなった。

 

アウクスブルクは343で、

ギキエヴィツ、オクスフォード、フーウェレーウ、グムニー、カリジューリ、ペダセン、シュトロブル、マイアー、バルガス、ハーン、ゼチリ。

昨季はヘルタから貸し出されビーレフェルトでプレーし、今季はアウクスブルクにローンで加わっているアーネ・マイアーがスタメン。アウクスブルクからのローンで昨季ビーレフェルトでプレーしていたセルヒオ・コルドバはベンチスタート。

 

狙いと設計が未成熟だった5バック

ビーレフェルトは前節から3人変えているが、スタメン発表の時点ではこれまで通りの4バックで4231か442が予想された。しかし蓋を開けるとビーレフェルトは5バックで、ヴィマーが右のWB、ラウルセンが左のWB、CBに右からブルンナー、ピーパー、ニルソン。最前線には右からハック、奥川、セラが並んだ。今季ここまで3バックで保持する相手に対してはあまりプレスがかからず苦戦を強いられてきたが、ここではミラーにして人数を合わせる狙いがあったか、今季初の5バックでのスタートとなった。

しかし、実際にこの5バックは、設計もしくは目論見に甘さがあった。まず、相手の3バックでのビルドアップに対する3トップのアプローチは、ハイプレスにいくわけではなく牽制程度。フライブルク戦やフュルト戦でも見られてように、「その程度の牽制なら3人いなくても出来るだろう」あるいは「人数合わせているのだからしっかりホルダーの自由を奪ってほしい」と思わされるような完成度。特定のエリアやコースに誘導するということもなく、アウクスブルクのバックラインは基本的にあまりストレスを感じずボールを持てただろう。

構造的なエラーは、ビーレフェルトの後方にも存在した。アウクスブルクの3バックがライン際まで開いた右WBのカリジューリにボールを通し、そこから一気に前線にボールを送るという形が立ち上がりから立て続けに発生したのだ。このように相手に配置を噛み合わせてミラーゲームを選択した場合、バックラインでの同数を受け入れてでも前から人数を合わせにいく必要がある。実際にビーレフェルトの最終ラインを見ると、3人のCBの前にアウクスブルクの3人のアタッカー(ゼチリ、ハーン、バルガス)がいることになる。アウクスブルクの左サイドにボールがある場合、ビーレフェルトの左WBラウルセンはここの3vs3のフォローのために大外のマークは捨てて絞ってくるのだが、右WBのヴィマーは本来DFの選手でもないためそうした動きは見られない。特にヴィマーのサイドにボールがある場合には、守備を手厚くしてフォローしないといけないという心証もあったであろう。ラウルセンのスライドのための時間は、前線の選手がボールホルダーの自由を制限することで本来担保できようものだが、実際には簡単にサイドへと展開されてしまう。開始1分のシーンでは、フーウェレーウから受けたカリジューリにラウルセンが遅れて出ていくものの、ワンタッチで内側にかわされ、前方のゼチリに通されシュートまで行かれているし、その3分後には、戻りオフサイドになったものの、より速く寄せたラウルセンの裏をかいて今度はカリジューリがダイレクトでボールを送っている。

これらのシーンに危機感を覚えたのか、奥川にCBへのプレスと2CH(シュトロブル、マイアー)のケアを兼務させる形を変え、その2人にはプリートルとクンツェが出ていくようになる。すると今度は間延びしたスペースを狙われ、ロングボールを蹴られてフィニッシュまで持ち込まれてしまう。縦の距離を引き延ばされ、相手が蹴ったボールも、こちらが蹴ったボールも、sボールを回収できず苦しい時間が続いた。

17分には、アウクスブルクがビルドアップからビーレフェルトの守備を剥がしにきて、これが先制点のシーンに繋がる。CHのシュトロブルが左サイドに流れると、左WBのペダセンがハーフスペースを前方に走り、マークをズラす。ここでの縦へのボールは一度防いだが、繋げられず奪い返されると、カリジューリにシュートを放たれる。これはオルテガが防いだが、そのCKからオクスフォードにヘディングシュートを決められてしまう。失点自体はセットプレーであるが、繰り返し簡単な前進を許しては相手にCKを与え続けていたことを考えると、試合の入りに失敗した結果と言える失点であった。

 

まず疑問が残るのはヴィマーの起用だ。ここまでヴィマーはフランクフルト戦の同点ゴールを皮切りに攻撃面ではインパクトを残してきたが、SHで起用されても守備では不安があり、ハックや奥川と比較するとSHとしての守備タスクの達成度は低かった。この試合でもヴィマーはアフターでトリッピングしてしまうシーンが多く見られ、26分には繰り返しの反則を取られてイエローカードを受けた。失点シーンの前にあったような、シュトロブルがサイドに流れる形では判断が遅れ、プリートルに強く指示を受けて慌ててアプローチに行くようなケースも見られた。ヴィマーがチーム内での原則を一切遵守できていなかったというなら話は別だが、これまでのプレーを見ていれば守備の弱点となりうるのは明白で、起用した方が悪いと言えるだろう。

また5バックを選択していながら、縦につけられたボールに対し3CBがほとんどチャレンジすらできていなかったことも気になった。もしかするとアウクスブルクが532で来ることを想定しており、3バックをセラとハックで牽制し、奥川はアンカーのケア。後方では2トップ+2IHに対してCH+3バックで対応するという狙いだったのかもしれないが、開始1分の時点でこの狙いが外れていることは発覚しているので、例えば奥川とクンツェをIHとして並べ、プリートルにDFラインの前をプロテクトさせるなどの処置を講じるべきだったのではないかと思う。

 

前半も終盤にかけてはボールを持てるシーンが少しずつ増えていったが、落ち着いてボール保持はできず。攻め手はせいぜいハックがキープしサイドを変える展開くらい。苦し紛れのミドルシュートが目立った。

 

後半は適切な改善

1点を追いかけるビーレフェルトは後半頭からヴィマーと奥川に代え、シェプフとエジミウソン・フェルナンデスを投入。中盤は3枚にし、プリートルがアンカーでその左にクンツェ、右にシェプフが入った。フェルナンデスはそのままヴィマーの務めていた右WBに。

応急処置として妥当に思えるこの交代は、実際に奏功。同数でのマッチアップを強いられていた3バックの前をプリートルがプロテクトし、中盤の人数が増えたのでセカンドボールの回収合戦でも優位に立てるようになった。さらに中央もサイドも対応できるフェルナンデスがWBに入ったことで、対面のWBを牽制しながら中央エリアのフォローに入ることも可能に。サイドのコースを消しつつ、内に絞ってパスカットというシーンも見られた。

前半ではビーレフェルトの3バックに対し積極的にプレスをかけていたアウクスブルクだが、後半はそれほど余裕を持てなくなったのでリトリート気味に。その分落ち着いてバックラインでボールを持てるようになったビーレフェルトは、右サイドでシェプフ、フェルナンデスを中心に、さらにブルンナーも加わって起点を作り攻撃のルートを見出した。繋いで前進することができなくても、バックラインでは時間の余裕があるためオルテガからしっかり狙ってフィードを蹴る形も久々に作れた。

75分の同点ゴールのシーンも、右サイドでの起点を作れたことに起因する。これで得たスローインから、弾かれたボールをラウルセンがダイレクトで決めて同点に追いつくことができた。

その後はキックオフでの再開直後にネットを揺らされたが、幸運にもオフサイドでゴールが認められず。そのまま1-1で終了。ビーレフェルトとしてはどうにか勝ち点1を拾った格好だ。

 

厳しい試合だが収穫もあり

劣勢から少しずつ盛り返し、最後はスーパーゴールで追いつく展開はフランクフルト戦を彷彿とさせる。ただ、この試合の方が、同点に至るまでの試合展開はネガティブ。試合の入りは準備の不十分さを感じさせた。前半は絶望的だったが、ハーフタイムの選手交代で修正したことは評価に値するだろう。特に収穫は”エディ”ことエジミウソン・フェルナンデス。コンディションの問題からまだ90分フル出場は叶わないが、ポジショニングやボール捌きはレベルの高さを感じさせた。彼と近い位置でプレーすることで、シェプフも加入後で最も良いパフォーマンスをしていた。複数のポジション、ロールに対応できる点もこの2人の強みであるので、5バックを継続するにしろ、4バックに戻すにしろ彼らを軸に戦い方が構築されるのではないだろうか。