21/22 ブンデスリーガ 9節 ビーレフェルトvsドルトムント


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ビーレフェルトのスタメンは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、エジミウソン・フェルナンデス、ラウルセン、プリートル、シェプフ、クンツェ、ハック、セラ。

前節アウクスブルク戦の5バックは限定的な措置ではなく本格的な路線変更だったようで、そのアウクスブルク戦の後半を踏襲するメンバーで532。奥川雅也は今季初めてスタートのメンバーから外れ、最後まで出場はなかった。3トップでの守備がハマらず強豪相手に2トップに変えるという流れは2節→3節のデジャヴだが、修正しないよりはマシである。

 

一方のドルトムント

コーベル、アカンジ、ポングラチッチ、フンメルス、ヴォルフ、アザール、ジャン、ベリンガム、ロイス、ブラント、マーレン。

ドルトムントは前節まで4バックだったと記憶しているが、こちらも3バック(5バック)に。離脱者が多いという苦しい台所事情も影響しているのかもしれない。3CBの並びは、右からアカンジ、ポングラチッチ、フンメルス。ただしこの並びは前半の途中に変わる。WB、そして中盤から前も錚々たるメンバー。同数でのタイマン勝負のような形になればビーレフェルトには当然勝ち目がないので、捨てるエリアと厳しく行くエリアのメリハリが大事になる。

 

 

アウクスブルク戦では相手の3バックに対してふわっとアタッカー3人で寄せに行き失敗したわけだが、当然この日はそんな中途半端なことはできないし、メンバーもいじっているのでハックとセラの2人で牽制する。今季の全ての試合を振り返っても、後ろ3枚でのビルドアップに対しては最前線を2枚にした方が安定して守れている。もちろん前の人数を削っている分、後ろのスペースは1人分多く埋められているということはあるが。当然ドルトムントがボールを持つ時間が多くなるが、立ち上がりはアタッキングサードまでボールを届けさせず、いい入りができた。前節では右サイドでのフェルナンデスとシェプフの2人が絡むことで攻撃の起点となっていたが、シェプフのこの日のスタートポジションは左のIH。相手の左サイドにボールを誘導し、シェプフはアンカーのジャンを消しに行く形が目立った。当然シェプフが本来いる左のハーフスペースあたりが空いてしまうことになるが、ドルトムントほどの相手になるとこうしたスペースを見逃してはくれない。すぐに気づき、ブラントが降りてきたりアカンジが運んだりして活用するようになった。

 

ビーレフェルトは基本的に、相手のCBに持たれる分には構わないというスタンス。アウクスブルク戦ではシュトロブルにやられていたような、ベリンガムが左サイドに流れて引き出す動きを見せても、食い付かずブロックの維持を優先した。さらに逆サイドでアカンジやブラントが自由にボールを持てるという状況への対処も早く、10分過ぎにはシェプフとクンツェの左右を入れ替えて、このインサイドハーフの2人もなるべく相手に食い付かずブロックでのポジショニングを優先させるようになった。

 

29分に先制されるまでは、狙い通りに試合を運べていたのではないかと思う。ドルトムントがそこまで無理に攻めてこないことも手伝ってチャンスを与えなかったし、一方で奪ってからの速い展開でシュートに持ち込むことができた。特に惜しかったのは9分と17分のシーン。前者はハックのキープから、セラが繋いでシェプフがサイドを変え、右サイドを上がったフェルナンデスの折り返しを最後はハックのシュート。後者は、ボールを運ぼうとしたポングラチッチからセラがボールを奪い、千載一遇のチャンスを得るもタッチが悪く決められず。ドルトムントはこのプレー以降アカンジを中央、ポングラチッチを右とCBのポジションを入れ替えた。

 

直近2試合に比べれば希望を持たせる前半になるかと思えたが、ここから2失点してしまう。まずは相手の攻撃を一度は止めるも、カウンターに転じようというところで再度奪われ、PKを献上。これをジャンに決められて先制を許す。こうして一度攻撃を止めるも、その後が繋がらずに奪回されてしまうことは試合を通じて多かった。以降は崩されるケースや、プレッシングが上手くはまりそうなところを躱されてスピードアップされたり、ロングボール1本でフィニッシュまで完結させられてしまう場面も出てくる。そしてコーナーキックから、フンメルスのスーパーボレーで2点目を献上し前半を折り返す。

 

ビーレフェルトはこの試合もハーフタイムで2枚の選手交代。セラに代えてクロース、そして接触で痛んでいたブルンナーに代えてギリェルメ・ラモスが初めてブンデスリーガのピッチに立った。ラモスは今季加入したポルトガル人のCBで、メンバーには入り続けていたもののこれまで出場なし。ピーパーの欠場時も、「言語面での問題からまだ時間を与える必要がある」と監督から会見で説明されていたアンドラーデと違い特に言及もなく、本職でないデ・メディーナが起用されていたために、クオリティもしくはコミュニケーションのところでまだ起用できないという判断をなされていたのかと思われたが、ここでデビュー。初出場ながらも堂々としたプレーぶりで、前に出ていく強さと組み立ての安定感を披露し、セットプレーでも打点の高いヘディングシュートを放った。特に対面の相手への強さは現在右のHVで起用されているブルンナーにはない特徴なので、5バックが続くのであれば今後も活躍が期待できそうなパフォーマンスだった。

 

後半も、2点のリードを持つドルトムントは特に急いで攻める必要がないので、前半とおなじような推移に。ただ攻撃では、ハックが前半とは違って右サイドに顔を出す機会が増えたので、フェルナンデス、シェプフと絡むことが増えてそこからは少し可能性を感じさせた。フェルナンデスは依然としてフルタイム出場は叶わないコンディションであるので、ヴィマーと交代。前節いいところを見せられなかったWBとしてのリベンジになったが、展開が展開なだけに守備に回る時間は少なく、シェプフといい関係を築きドルトムントのDFからすればそれなりの脅威にはなっていた。最後に1点を返すPKをゲットしたのもヴィマーだった。

 

展開として圧倒的に支配されたり、試合を殺されて一切得点の気配がしなかったりという一方的な状況にはならなかったが、前がかりになったところを狙われてあっさり崩されてしまったり、せっかく相手の攻撃を止めてもマイボールにしきれなかったりという前半からの課題は残ってしまった。ベリンガムに許した3点目も、ゴール自体はベリンガムの素晴らしい個人技であったが、そこに至るまでの崩され方は淡白であった。

 

3点目で試合は決してしまったが、キックの調子がよかったオルテガからのフィードは久々に一つの主要な攻撃ルートになった。オルテガ→クロースのフィードは単に前者の正確なキックと後者の空中戦の強さのお披露目で陣地を回復できるというだけではなく、チーム、そして会場を盛り上げる作用がある。ヴィマーの獲得したPKをクロースが決めたのは終了直前で、ほんの一矢報いた程度のものだが、少しでもポジティブな空気で終われたことを前向きに捉えるべきなのだろう。

 

開幕から継続して高いクオリティを発揮していたのはロビン・ハックだったが、加えて戦列復帰したエジミウソン・フェルナンデスが期待通りのパファーマンスを見せ、アレサンドロ・シェプフも調子をあげてきた。個人的には歓迎していない5バックへのシフトチェンジだが、アウクスブルク戦、ドルトムント戦の180分である程度の目処は立てられたと思う。今季初勝利に近づいていると信じたい。