ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 12節

ベルギーリーグの12節。ミッドウィークにヨーロッパのコンペティションがあったため、出場クラブのゲームは日曜日に集中。他国のリーグでも注目を集めるビッグマッチが同じ週末に数多く開催されたが、ベルギーでもアントワープvsクルブ・ブルッヘ、ヘンクvsヘントのゲームが組まれ、”スーパーサンデー”と銘打たれた。さらに土曜日には3位オイペンvs1位ユニオン・サン・ジロワーズの上位対決。この恩恵を受けたのは我々極東のベルギーリーグファン。DAZNでは久しぶりに4試合が配信された。前半戦も2/3を消化するタイミングで、多くのクラブにとってキーとなる節かもしれない。

 

 

オイペン 2-3 ユニオン・サン・ジロワーズ

上位に残り続けるオイペンとUSGの上位対決。USGはこれまでメンバー、戦い方を固定気味で、特にファンゼールとウンダフの2トップは絶対的。前節途中出場でハットトリックを達成した三笘薫を先発に組み込むとすれば、どう変えてくるのか気になるところであったが、左のWBで先発出場。もともと左のWBを務めるラプサンも不動の存在だが、この日は右のインサイドで出場。三笘は開始5分に、カウンターでそのラプサンからのパスを受けると、左サイドから突破しPKを獲得。早い時間での先制を演出した。三笘がWBで出場するとなると、気になるのは守備面。この試合ではオイペンが予想の5バックではなく4バックだったので、ファーにあればDFラインに入って絞り、ボールが近くにくれば、オイペンの実質右サイドバックとなったへリスを見る形でほぼ固定され、特にやりづらさはなさそうであった。左HVのファンデルヘイデンがよくフォローしていたという側面も多少はあるが、三笘自身もカウンターを止めたり、キープ力に優れるヌフの突破を止めるなど守備で随所に好プレーを見せ、穴となるようなことはなかった。攻撃での見せ場は、最初のPKゲットのシーン以降はあまり多くはなかったが、ハーフスペースで引き出し、運んでファンゼールに決定的なスルーパスを出したり、後半には高い位置で受け、カットインしてシュートなど一定の存在感は示した。不慣れなポジションなので当然仕方がないが、組み立てへの関与ではもう少し適応が必要かもしれない。ユニオンは27分頃にも、今度はハイプレスでのボール回収からテウマのゴールで加点。

ボールを握りつつもチャンスを作れなかったオイペンは、68分の交代で左サイドにケイタを入れてから、クロスの割合を増やす。数分後、右サイドからのクロスのこぼれ球を拾ったカイェンベが1人かわして5人に囲まれながらミドルを決めて1点を返す。エド・カイェンベは中盤の底でほとんど失うことなくボールをキープ、そして散らし続け、両チーム通じて最大の存在感を示していたが、さらにスーパーゴールでインパクトを残した。直後にセットプレーのあとの混戦からアグバドゥが押し込み、3分で2点差を追いついた。しかしその後のキックオフでの再開で、ユニオンは速攻からニールセンが勝ち越しゴール。目まぐるしくスコアが動いたが、オイペンの1点目のシーンでクリアをカイェンベに渡してしまう格好となったニールセンが名誉挽回の決勝ゴールを奪った。

翌日クルブが引き分けたため、ユニオンは完全に単独首位に。三笘のWB起用も成功。ラプサンインサイドハーフは少し負担が大きかったようだが、チーム全体のバランスも維持されていたので、この形は続けるのではないだろうか。オイペンは2連敗となり、ユニオンとの勝ち点差が5に広がってしまった。

 

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アントワープ 1-1 クルブ・ブルッヘ

”スーパーサンデー”最初のメニューは、怪我人が増えてきて、少し停滞気味のアントワープと、これまで上位との対戦が少なかったクルブの一戦。アントワープは昨季のレギュラーシーズンで、唯一クルブから2連勝を達成している。

クルブは右サイドにソワーではなくDFのファンデルブレンプトを起用。大敗したヘント戦の轍は踏まないと言わんばかりの、慎重な姿勢はプレーからも見てとれた。アントワープも前に出ていくパワーが不足していたため、良くも悪くもビッグマッチらしい重さがあった。

先制は、ほとんどシュートまで行けていなかったアントワープ。セットプレーから、元クルブのエンヘルスがゴールを奪った。そのまま前半を終えられれば理想的な展開に持ち込めたが、アディショナルタイムにクルブもコーナーから、ヴァナーケンが決めて同点。

後半も優勢はクルブ。少しずつサイドを崩す機会も増えてきたが、アントワープ守備陣がノア・ラングに決定的な仕事をさせなかった。82分に、DOGSOでアントワープのCBエンヘルスが退場。クルブは数的有利を活かして押し切りたかったが、勢いに任せた雑な攻撃に終始。クロスの本数が増えることが悪いとは思わないが、焦りがあったのか圧倒的な高さを持つヴァナーケンがまだ飛び込めないようなタイミングでクロスを上げてしまうことが多く、効果がなかった。そうこうしているうちに、カウンターを止めたンソキが2枚目のイエローで退場。どちらにとっても、あまりポジティブではないドローとなってしまった。

 

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ヘンク 0-3 ヘント

リーグ、ELともに負けが込んできたヘンクと、カンファレンスリーグでは好調を維持し、リーグでも首位オイペンを相手に前節久々の勝利を手にしたヘント。これまで勝てば首位というチャンスが何度かあったヘンクに対しヘントは下位に沈んでいたが、この試合ではヘントが勝てば勝ち点で並び、順位が入れ替わるという”6ポインター”となるまで気づけば差が縮まっていた。

”スーパーサンデー”の夕方に組まれた試合にふさわしく、立ち上がりから緊迫感のある工房が続いた。まず6分に伊東純也の惜しいボレーをボラートがセーブするシーンがあったが、ラインを高く保ち縦への速い攻撃で攻めるヘントの優勢が次第に鮮明に。意外にもヘントは11節終了時点での失点数が13とリーグ2位の少なさ。6−1と大勝したクルブ戦を筆頭に、アンデルレヒトアントワープといった強豪とのビッグマッチもそれぞれ1失点ずつはしているが、ハイラインを維持してのコンパクトなプレッシングで相手陣地に押し込み続けるような時間が長かった。奪えばティスダリ、ドゥポワトルと起点になるアタッカーが待っていて、さらにこの試合ではその少し下のスペースをベズスが自由に動き存分に活用していた。そのベズスは、後半自ら獲得したPKを決めてチームの2点目を挙げている。速攻ができなくともサモワーズ、フォルトゥナの両WBが幅を作り、ヘンクのブロックを広げて前の3枚のプレーエリアを確保した。

ヘンクは前半30分くらいから、少しずつペースをつかみ始める。ヘンクもサイドを変えながら、じっくり広く攻撃できるようになっていたが、ヘントの守備ブロックが固い。実は前半はヘントより多くの枠内シュートを放っているが、決定的なチャンスだと感じられるようなシーンはわずかだった。そうした中、ヘントが42分、CKを防ぎそのまま綺麗なカウンターでサモワーズがフィニッシュし先制に成功する。

攻めあぐねる展開の中で伊東はドリブルやクロスでかなりチームの攻撃に寄与しているように思えたが、2点を追いかける66分という珍しく早めの時間でトルストヴェットと交代。伊東が下がってからのヘンクの攻撃はロングボールが増え、トルストヴェットをターゲットやセカンドボールの回収役にさせたいという狙いがあったのかもしれないが、サイドを一切使えなくなってしまいゴールはより遠くなった。ヘントは79分にカウンターでドゥポワトルのパスを受け抜け出したティスダリが落ち着いてサディクをかわして3点目を挙げ、これで試合を決めた。

敗れたヘンクはリーグ戦3連敗、ELも含めると公式戦5連敗で10位に。勝ったヘントはこれで今季初の連勝。USGが2失点したため、チーム失点数はUSGと並び最少に。今後の上昇も期待できる充実の内容だ。

 

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ルーヴェン 4-1 シント・トロイデン

前節はともに追いついての2-2だった両チーム。立ち位置や地力を考えるとお互いに勝利したいゲームだったが、望み通りに試合を運べたのはルーヴェンの方だった。STVVはロングボールや、サイドを使った縦に速いシンプルな攻撃からリズムを作ることが多いが、この日はルーヴェンがあまり前からプレッシャーに来ず、最前線でもハーフウェイライン前後まですぐにリトリートするためバックラインで回すような時間が増えた。サイドのスペースをインサイドハーフが突くというような攻撃の形は着実に積み上がっているSTVVだが、そのパターンを使うスペースがなく、いつもと違う形で崩すことを求められた。18分にセットプレーから林大地が決めるもオフサイドで取り消し。その後は最前線で待つ林と、広範なスペースに顔を出す原大智という役割分担。原は普段ブリュースやデ・リダーがやっているような、斜めに外に抜けるランニングでWBからボールを引き出しチャンスメイク。21分には、左サイドから中に切り込み2人をかわしてラストパス、直後に今度は右サイドでバウアーから引き出しクロスを上げるなど、見せ場を作った。

攻撃は15分過ぎからハーフタイムを挟み先制点を許す59分までの間、ボールを持たせてもらえることを活かして、ぎこちなさは否めなかったし効率も悪いながら、ある程度の形は作った。一方この日はあまり守備が機能せず。林と原の2トップは積極的にボールを追いかけたがあまりに範囲が広く、その後方にいるIHのダーキンとデ・リダーも、追随してプレッシングに行くのかスペースを埋めるのか中途半端なポジショニングに。あまりプレッシャーをかけられていないにもかかわらず陣形としては514のようになってしまうことが多く、中盤が間延びしているところをメルシエやマールテンスに自由に使われてしまい、ルーヴェンに労せずボールを運ばれてしまっていた。59分先制を許すが、そのシーンもあまりにあっさりと前線にボールを通され、そこからメルシエのスルーパス1本で右サイドを崩されアル・ターマリの折り返しをカバに決められてしまった。直後にラヴァレーのゴールで一旦追いつくが、66分、カウンターに行こうとしたところを逆に奪い返され、スフライファースに決められ勝ち越しを許す。その後は押し込んでも、全ての攻撃が単発でフィニッシュに結びつかず。76分にライストナーのファールでPKを与え、ライストナーは2枚目のイエローカードで退場、PKもカバにしっかりと決められ試合が決してしまった。ルーヴェンはその後マールテンスもゴールを決めて4点目。負け試合は少ないものの、引き分けが多すぎて勝ち点を伸ばせず下位に沈んでいたルーヴェンが、5試合ぶりとなる3勝目を挙げた。

STVVは、これまでのようなコンパクトでタイトなプレッシングがこの試合では見られずに今季最多4失点で敗戦。4失点自体は重く捉えるようなものではないが、これまでの良さが失われてしまったことは不安要素だ。攻撃でも狙いどころの共有など連携面に問題があった。林と原のコンビは、どちらか一方に楔が入った時などはいい連携を見せていたが、裏に出たボールに対し2人がどちらも反応して追いかけかぶってしまうようなシーンが何度かあって勿体なかった。次節の相手はクルブだが、粘り強く戦えば勝機は見出せるはずの相手なので、攻守両面できちんと戦い方を整理して臨みたい。

 

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スラン 1-3 シャルルロワ

前節ヘンクに快勝し久々の勝利を挙げたシャルルロワは、この日もスラン相手に上々のパフォーマンス。まずゴリザデのパスに抜け出したニコルソンが今季7点目となるゴールを決めると、カイェンベのクロスにゴリザデが合わせ加点。前節のスコアラー2人の得点で2点のリードを奪うと、後半には森岡亮太が相手守備陣の隙間を縫うように30m以上1人でドリブルで持ち運び、自分で流し込んで加点。森岡は今季3ゴール目。アウェイではリーグ唯一無敗のシャルルロワは勝ち点を20に乗せて、4位オイペン、5位メヘレン、6位アンデルレヒトと並び7位まで盛り返してきた。スランは終盤1点を返すのがやっとで、連敗。16位に後退した。

 

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セルクル・ブルッヘ 1-1 スタンダール・リエージュ

4連敗中のセルクルと、前節連敗は止めたものの4試合勝利のないスタンダール。どちらも不調を早く脱したかったが、早い時間に点を奪い合うと、以降は決定打を出せずに痛み分け。セルクルは未勝利のベールスホットを除くと唯一ホームでの勝利がない。

 

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コルトレイク 1-0 オーステンデ

上位を窺える位置をキープする両チームの6ポインター。コルトレイクがパプ・ハビブ・ゲイェの1点を守り切って4試合ぶりの勝利を挙げ、オーステンデを抜いて8位に浮上した。4試合連続ゴール中だったオーステンデのマクタル・ゲイェはこの日は不発。

 

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メヘレン 2-2 ズルテ・ワレヘム

開始15分で2点ずつを取り合う慌ただしい試合に。メヘレンは一時好調だったニコラ・ストルムの当たりが止まっているが、他のアタッカーたちが点を取り始めて補完している。コーナーでの素早いリスタートから奪った2点目などは、チームのメンタル状態の良さを象徴している。連勝は4で止まってしまったが、まだまだ上位に残り続けるだろう。ズルテ・ワレヘムはアシストランクトップのドンぺがコーナーそしてクロスから2アシスト。連勝とはならなかったが、攻撃陣が復調し始めているので、下位脱出の兆しが見えてきている。

 

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アンデルレヒト 4-2 ベールスホット

4試合連続で引き分けと”ドロー沼”にはまっていたアンデルレヒトだが、最下位ベールスホット相手に4点を奪い久々の勝利。これで7戦無敗に。ベールスホットはこれで10敗目。鈴木武蔵は欠場が続いている。

 

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