21/22 ブンデスリーガ 6節 ウニオン・ベルリンvsビーレフェルト【フォギーとの再会】


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今季未勝利のビーレフェルトは、2部時代から勝利したことのないウニオンベルリンのホーム、アン・デア・フェルステライに乗り込む。昨季のアウェイでのウニオン戦は開始2分で遠藤渓太にブンデスリーガ初ゴールを許し、以降の試合経過は私の記憶からは抹消されているが、無惨にも0−5で敗れている。ウニオンとは3季前まではツヴァイテで凌ぎを削った間柄(2節でも同じような表現を見た記憶が)だが、久々の昇格でどうにか残留にたどり着いたビーレフェルトとは違って、ウニオンは19/20のブンデスリーガ初参戦から健闘を続け、昨季は7位に入り今季は新設されたUEFAコンペティション、カンファレンスリーグにブンデスリーガからは唯一参加している。

 

ビーレフェルトのスターティングメンバーは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、プリートル、シェプフ、奥川雅也、ハック、ラスメ、クロース。

前節からの変更は、コンディションが万全でないヴィマーに代わりラスメが2節以来のスタメン。昨季からお馴染みの4バックに加え、プリートルとシェプフの2センターも不動になりつつある。直近3試合はスタートポジションを入れ替えながら442ベースでのスタートだったが、この試合は中央に入ったクロースと奥川の縦関係がはっきりとしていて、ラスメが右、ハックが左に入る4231で構えることになった。

 

ウニオン・ベルリンは、

ルーテ、バウムガルトル、クノッヘ、フリードリヒ、トリンメル、ギーセルマン、ケディラ、プレメル、クルーゼ、アウォニー、そして”フォギー”ことフォクルザマー。

原口と遠藤はベンチからのスタート。昨季までビーレフェルトでプレーしたフォギーは、ウニオンに移籍後、リーグ戦では初となる先発出場。前節はドルトムント相手に移籍後初ゴールを奪っており、旧友たちとの共演に向けて準備は万端だっただろう。

 

フランクフルト戦以降442で守備は大崩れしなくなっているが、この試合はメンバーと配置が変わったことでプレッシングが機能せず。3バックに対して4231とし、1トップのクロースと両SHがそれぞれ対面のDFからの縦のコースを牽制させることを明確にし、その背後で2CHを奥川にケアさせる形をとったことで、同じく3バックだったグラードバッハ戦のように、プレスはかかれどクロースがカバーに奔走しいたずらに体力を消耗するという事態は避けられた。しかし誰がどこまで出ていくのか、降りてついていくのかというところは前節までと比べてファジーで、7分のハックがCBまで激しく寄せるも後ろがついてこなかったシーンに代表されるように意識のずれが目立った。また左サイドのハックは、自身の対面のHVからWBに出された際にそのまま内側を切ってプレスを継続することができるが、右サイドに入ったラスメはそのように気の利いた動きができない。これを見越した誘導やケアがあったわけでもないので、ウニオンの左WBギーセルマンに余裕を与えてしまうことが多かった。ビーレフェルトはこれまで全ての試合、全てのハーフで相手を下回るポゼッションを記録しているが、ウニオンもそこまで保持へのこだわりが強いわけではないようで、多少苦しいと簡単にロングボールをチョイスしてきた。ビーレフェルトの今までの対戦相手では一番ボールを放すのが早いチームで、またウニオンとしても苦し紛れではなくそもそもの用意として簡単に蹴ることを選んでいたので、セカンドボールの回収というフェーズでもビーレフェルトはあまり優位に立てなかった。以上のことから、ビーレフェルトとしては崩されているわけではないがあまり奪える気もしないという展開に。保持においても、ウニオンがハーフウェイライン+15mくらいのところまで前線の3人がリトリートしラインのはっきりした343気味のブロックで構えてきたことで、プリートルがCBの間に降りることも多くいつもより後ろでゆったりと回せたが、その分確実性のある前進のルートを見出せずにいた。ニルソンが開いてボールを持ち、ハックとラウルセンがレーンを入れ替えながら受けるといういつものルートはしっかりと牽制されているし、仮に通せてもすぐに囲まれてやり直しを強いられてしまう。オルテガのフィードもコンパクトなウニオンのブロックの中で回収することは難しかった。トランジッションの流れでシェプフが引き出し前を向き運んで自らシュートという場面や、ピーパーとプリートルの2人で3トップをかわし、降りて引き出した奥川が運ぶというシーンはよかったが、どちらも再現性のある形ではなかった。

 

ロストからの被カウンターが目立つようになり、ギーセルマンのクロスからファーでトリンメルが折り返し、アウォニーにフリーで合わせられるという危険な形も徐々に出現。大外へのクロス→折り返しをフリーで打たれるという形は、直接失点にこそ結びついていないものの前節からよく狙われている。40分くらいからは、さすがに左サイドの手当てが必要と判断したかラスメとハックの左右を入れ替えた。後半も継続してラスメが左、ハックが右に。本人がサボっているわけではないが、やはりラスメはあまり守備が上手とは言えないので、今度は右WBのトリンメルに余裕を与えることになってしまう。また左では、CBのクノッヘとフリードリヒがパス交換を繰り返してハックを走らせ、SBのブルンナーはギーセルマンがピン留めした状態でクルーゼがライン際に流れてきて引き出すという、ビーレフェルトからすればかなり厄介なボールの動かし方も見せるようになってきた。ただし、45分から60分、すなわち後半の最初15分間でより多くゴールに迫ったのはビーレフェルトの方。ウニオンが前半に比べると前に出てくるようになり、全体的にオープンな展開になったこともあるが、奥川やハックがセカンドボールを回収してフィニッシュへと繋げた。特にニルソンがアウォニーを潰し切り、拾ったハックが右サイドに逃げたクロースに通したシーンと、右サイドで奥川が回収しハックに渡したシーンのどちらかは決め切りたいところであった。

 

61分、ラスメに代えてヴィマー。この辺りの時間帯はセットして守備する場面を除いて前線は流動的になっていてたが、ヴィマーが右サイドに入り、ハックが左サイドに戻るということで一旦落ち着いた。66分にはウニオンも2枚替え。アウォニー、フォクルザマーを下げてベーレンス、ベッカーを入れ、最前線をそっくりそのまま入れ替えた。フォギーは強さを活かしたポストプレーと、味方を使う丁寧なパスで存在感を示したが、決定的な仕事は出来ずにここで交代となってしまった。オープンな展開が手伝い、前半に比べれば相手陣地でボールを持てる時間も増えたが、逆に速攻を食らってしまう場面も。特にピーパーが、アウォニーに対しても、代わって入ったベッカーに対しても後れを取ることが多かった。78分に疲れ気味の奥川、ハック、さらにラウルセンに替えて、クリューガー、クンツェ、アンドラーデを投入。クリューガーは左サイドに入り、クンツェは本職のCHに。シェプフが押し出される格好で奥川の務めていた2列目の遊軍的なポジションに移動した。この交代はやや消極的にも見えるが、アウェイで、スコアはイーブン、さらに奥川とハックの両方を下げるとなると、中盤とFWを繋ぐタスクを任せられるのはシェプフくらいなので致し方ないか。ウニオンは80分にトリンメル、プレメルを下げ、原口元気とリエルソンをピッチへ。ビーレフェルトも負傷したブルンナーに代えてデ・メディーナを入れる。ラストの10分間は、ほとんどウニオンのペース。ビーレフェルトにとっては勝ち点1狙いの逃げ切りもちらつく中、88分、オルテガゴールキックを原口に頭で弾かれ、これが左サイドに流れたクルーゼにつながる。縦に通すとベッカーがピーパーを抑えて内側に繋ぎ、最後はベーレンスがニルソンを背負いながら難度の高いシュートを突き刺し、ついに失点。ゴール自体はベーレンスのスーパーゴールだが、その前のところ、ベッカーに入るタイミングで先にクリアしようとしピーパーが触れず、内側に通されてしまったのは痛かった。ベーレンスはこのゴールで”入った”のか、直後にもクロスバー直撃のシュートを放つ。ビーレフェルトはAT、プリートルのスルーパスに抜け出したクリューガーが綺麗にDFをかわしゴール前まで迫ったが、折り返しを阻まれてしまい、得点に至らず。劣勢の試合を決壊させずに終盤まで運んだが、最後にベーレンスの一発に沈む悔しい敗戦で16位に転落した。

 

 

ウニオン・ベルリンは、今やビーレフェルトにとって完全に格上。その点で、この試合は結果については割り切ってしまっていいだろう。この試合ではウニオンがそこまで積極的にプレッシングをかけてきたわけではないという事情もあるが、今までよりはゆったりとボールを回す時間もあり、再現性の点で疑問はあるがピーパーとプリートルがパス交換で第一ラインを越えたり、ピーパーが相手のスライドの遅れをついて1人で持ち運んだりと新たな形も出た。得点の少なさが大きな問題になっている中で、保持で新たなトライをしていることは悪くはないだろう。気がかりはラスメを攻守両面で上手く組み込めていないこと、選手交代で攻撃に変化をつけられないことあたりだろうか。そろそろ開幕して2ヶ月が経つので、今あるカードを最大限に活かすことと、誰が出ても安定して守れる組織の整備は、重要なミッションになる。出遅れていたエジミウソン・フェルナンデスとセバスティアン・ヴァシリアディスも、公式戦の出場は代表ウィーク明けとなるだろうがようやくチーム練習にも合流してきている。地力からすれば、勝ち点がついてこないことは仕方がない。ただ無抵抗で連敗を続けた昨季の序盤に比べれば、試行錯誤の数も、そこから得られたサンプルも格段に多い。ポジティブな材料、より確実性の高い材料を上手く結びつけて、ここから反撃の秋にしたい。