ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 9節

7月からスタートしているプロ・リーグは、これが前半戦のちょうど折り返しとなる9節。直前のミッドウィークに5節の延期分が行われたので、全チームの消化試合数がようやく揃ったが、この9節の終了時点で1位から12位までが勝ち点5差と大混戦である。本命の王者クルブ・ブルッヘは勝ち点18で首位にいるものの6強との直接対決を1試合(それもヘントに大敗)しか終えていないことを考慮するとあまり勝ち点は伸びておらず、開幕は大きく出遅れたアントワープ、ヘンクはついにクルブと勝ち点1差まで詰め寄ってきている。この2チームと勝ち点17で並び、上位に踏みとどまり続けるオイペンの躍進も見逃せない。シント・トロイデンは一時の停滞を完全に打破し、ついにプレーオフ2圏内の8位に上昇。試合内容を見てもしばらくはこのあたりでの順位争いに残っていきそうだが、8位から12位まではシント・トロイデン、メヘレン、オーステンデ、スタンダール・リエージュ、そしてシャルルロワの5チームが勝ち点13で並んでいる。下位はベールスホットが未だに勝利なし。これまでリーグ最多の5枚のレッドカードを受け、2節のヘント戦のドロー以降は7連敗と大いに苦しんでいる。

 

 

 

 

クルブ・ブルッヘ 1-1 ルーヴェン

キャプテンのフォルマーを怪我で欠く以外はほぼベストメンバーと言えるクルブ。デ・ケテラーレを偽9番として起用する433をやはりベースとしていくのだろう。ソワーにとっては早くも古巣戦。ホームでのルーヴェン戦はこれまで全勝のクルブが、ハイプレスでほとんど相手陣地にルーヴェンを押し込んで試合を運ぶ。しかし532でしっかりとゴール前を固めるルーヴェンの守備陣を効果的に動かせず、押し込んではいるもののクルブのシュートはほとんどペナルティーエリアの外から。時折発動するルーヴェンカウンターアタックの方が、どちらかといえばゴールに近いと感じさせられるような前半は、42分にンソキがバックパスをミスして与えたCKをルーヴェンが決めて、展開とは裏腹にクルブがビハインドで折り返す。ルーヴェンのメルシエのキックは流石の精度で、ニアで合わせたエズカジャルのマークを外してしまったのもンソキだった。

後半もほとんどクルブが攻め続ける展開だが、なかなかゴールは遠くファンのため息とフラストレーションばかりが画面から伝わってきた。77分にルーヴェンのカウンターを止め、逆にクルブがカウンター。SBのマタが右サイドを1人で切り裂き、ミドルシュートでどうにか同点に追いついた。ルーヴェンは失点直後にマルテンスのシュートがポストを叩くなど新たにチャンスを作ったが勝ち越しはならず。このまま1-1で試合が終わると、金曜夜のヤン・ブレイデル・シュタディオンにはクルブファンからのブーイングがひたすら鳴り響いた。

USGが敗れたため1位の座は守ったクルブだが、下位のルーヴェン相手にホームでのドローは今後のスケジュールを考慮すると手痛い結果に。引いた相手を崩しきれず、何よりビハインドの時間が30分以上続きながら切った交代カードは2枚で、そのうちの1つはバランタに代えてムバンバとアンカーを入れ替えただけ。もちろん交代をしなかったからベンチが悪い、消極的というような単純な話ではないが、得点が欲しい展開でドストを入れた以外に切れるカードがないというのは少し頭が痛いところだろう。降格圏に沈むルーヴェンは大金星とはならなかったものの、アウェイのクルブ戦で初めての勝ち点。カウンターは脅威で、メルシエとアタッカーたちのコンビネーションも悪くなく、今後もコンスタントに得点は取れるだろう。

 

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スタンダール・リエージュ 1-2 シント・トロイデン

前節はともにホームでダービーマッチを落としたチーム同士の対決だが、そのニュアンスには大きな差。開始早々に退場者を出しせっかくのクラシコが壊れてしまったスタンダールに対し、STVVは上位ヘンクを追い詰め、敗れながらもセルクル戦以来の好調のイメージを継続。鈴木優磨、コナテの戦列復帰と林大地、ライストナーの加入以来メンバーと戦い方も固まってきて、今月は3試合全て同じスタメンで戦っている。

前半は、40分過ぎまで両チーム合わせてシュートが1本だけ、トータルのxGが0.03というとても静かな時間に。ホームのスタンダールがボールを持つ時間が長いが、STVVもスタートはラインを高く設定し前から奪いにいく意図を見せる。スタンダールは左サイドに人数を集め、右サイドでSBのシケをアイソレーションさせるようにボールを動かしていた。アマラーが降りて引き出すことが多く、右SHのラフィアもほとんど左サイドや中央まで流れてくるため、このサイドでの対応はSTVVも苦慮していた。フリーでシケにボールが渡った際には、対面のカカーチェがすぐに対応できるような準備はしているように見えていたが、前半終了間際、カカーチェが攻撃参加していた分空いたスペースを使われてカウンターを許し、一度は防ぐもさらにボールを回収したシケをコナテが倒しFKを与えてしまう。ゴール正面からやや右サイド寄り、25mくらいの距離だが、アマラーが動かしたボールをガヴォリーが決めてスタンダールが先制。キーパーのシュミット・ダニエルにとっては、味方の選手たちがブラインドになって軌道がよく見えず、難しいシチュエーションであった。

1点を追いかけるSTVVはハーフタイムに橋岡大樹と林大地を下げ、原大智とバロンゴを投入する。原大智はこれまで出場時間と出番の状況が限定的で思うようなアピールができていなかったが、この試合では45分間のチャンスをもらい、スペースメイクや味方とのコンビネーションで他の前線の選手とは違った特徴を見せた。バロンゴは林大地の加入以来出場機会を失っていたが、この試合では代わった橋岡のポジション、右WBにそのまま入った。同点ゴールのシーンは、そのバロンゴからライン際で上手く引き出したデ・リダーのパスを受けた鈴木優磨が中央で潰れ、こぼれ球を拾ったダーキンが左サイドから上がってきたコナテに繋ぐと、コナテはカットインしシケをかわしてニアにミドルシュート。一度キーパーに下げたところから、スムーズにボールが回ってゴールを奪うことが出来た。この数分後の56分には、ダーキンとデ・リダーに代えてライツとブリュースを投入。勝ち出してからプレゼンスが下がり気味の2人だが、ともに保持でより持ち味を発揮できる選手で、少しずつSTVVがボールを握る時間が長くなる。右SHのラフィアが左に流れる分、トランジッションで余裕が生まれやすいラヴァレーからの球出しが目立つように。これまで2本しかシュートを打てていなかったが、この交代から15分で4本のシュートを放ち、シュート数でスタンダールを逆転。ブリュースからはいいタイミングでボールが入り、これまではなかったような、細かいパスワークでPA内に侵入していくというシーンも多く見られた。逆転ゴールを演出したのもブリュースとライツの2人。88分、左サイドでカカーチェが持つと、ブリュースがSBの裏へ走って受け、ダイレクトで折り返すと原大智の背後から走り込んできたライツが合わせて決めた。

スタンダールはこれでホームで連敗となり、試合終了時にはサポーターから大きなブーイング。クラシコのショックを払拭できなかった。STVVはハーフタイムと同点直後、2度の2枚替えで見事に試合の流れを引き寄せ、勝ち点3を積み上げPO2圏内の8位へジャンプアップ。前節ヘンク戦は交代でむしろ流れが悪くなり逆転を許したが、この試合はホラーバッハの采配が奏功した。

 

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ユニオン・サン・ジロワーズ 1-2 アントワープ

開幕から好調を維持するUSGと、直近のミッドウィークでヘンクに勝利しいよいよ上位争い真っ只中に食い込んできたアントワープの上位直接対決。残念ながらピッチ上での共演とはならなかったが、川崎フロンターレの育成組織で1学年違いであり東京五輪でもチームメイトであった三笘薫と三好康児の対決ということで注目の集まる一戦に。直近のカップ戦でUSG加入後初ゴールを奪った三笘はベンチスタート、三好は完全にレギュラーに定着し、連戦でも疲れ知らずの先発起用が続く。

前半主体的に試合を動かしていくのはアウェイのアントワープ。マッチアップの噛み合わせ上フリーになりやすいSBを活用して前進を試みる。CBが開いてSBを押し出し、中央ではCHのフェルストラーテとゲルケンスがかわるがわる落ちてくる。サイドの三好とサマッタは、例のごとく中央に顔を出す機会が多かったので、結局は中盤での奪い合いが激しい展開へと変わっていった。アントワープが決定打を繰り出せない中で、この展開はむしろUSGにとって好ましい状況に。2人で完結させられるファンゼールとウンダフの2トップでのカウンターが徐々に目立つように。40分、左サイドでのカウンターから最後は逆サイドを上がってきたニューコープがフィニッシュしUSGが先制かと思われたが、これはオフサイドで取り消し。しかしその再開のFKをキーパーのビュテから受けたフェルストラーテが、リターンしようと下げたバックパスをファンゼールに狙われ、ビュテが掻き出すもこぼれ球をウンダフに詰められ失点を許してしまう。アントワープとしては、VARチェックが長くかかったことで集中を取り戻すのが難しかったのかもしれない。ここまで再三シュートストップを見せてきたビュテもさすがにブチギレ。直後にフェルストラーテは前節も決めている直接FKで名誉挽回の機会を得たが、これはUSGのキーパー、モリスのビッグセーブに阻まれ同点とはならなかった。

追いかける展開になってしまったアントワープは左SBのバタイユに代えてCBのセックを投入。ゲルケンスを左WBに入れて、プリスケ就任後ではおそらく初めての5バックに変更。ゲルケンスは気の利いたランニングやポジショニングが光るプレイヤーだが、便利屋のようになってきている。このシステムチェンジは、いずれにせよ中央に入ってくる三好とサマッタを初めからフライに近い位置でプレーさせるという狙いもありそうだが、どちらかといえば、USGの2トップへのケアを念頭に置いた施策であったように感じる。ミラーゲームのようになったことでUSGはむしろボールを奪いにいきやすくなり、アントワープの保持は前半に比べて機能せず、人数の揃っているところに突撃しては阻まれている、というような印象を持った。60分に三好、サマッタ、ゲルケンスを下げて、フィッシャー、エッゲシュタイン、ベンソンを入れる3枚替え。これで劇的に変わったというわけではないが、交代選手たちが仕事をする。70分に左サイドでボールを拾ったフィッシャーが自分で20mほど運んでからインスイングのクロスを上げると、フライがファーに消えてフリーでヘッダー。今季11点目となるゴールで同点に追いつく。79分には、ブタがUSGのハイプレスをかいくぐり、フィッシャーに渡してカウンター発動。左サイドを上がってきたベンソンに丁寧なラストパスを送り、これをベンソンが決めて逆転に成功した。三好がピッチを退いた15分後の75分に登場した三笘は、86分に中央から右足で惜しいミドルを放つもビュテに阻まれる。USGは試合を通じてアントワープを大きく上回る19本のシュートを放ち、過半数の10本を枠に飛ばしたが、そのうちの9本をビュテにセーブされ追加点を奪うことが出来なかった。

金曜日に試合を行ったクルブがルーヴェンと引き分けていたため、勝てば再び首位に立てるチャンスであったUSGだが、ここは足踏み。逆に連勝のアントワープはUSGをかわし、オイペン、ヘンクと並び勝ち点17で、首位クルブと1差まで上がってきた。

 

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ベールスホット 0-3 オイペン

今季唯一勝利がなく、他のチームとかなり離されて最下位に沈むベールスホットだが、この日も開始5分にファンデンベルフが退場。その数分後に先制を許すと、39分には6節シャルルロワ戦でも開始5分で退場しているデ・スメトが今季2度目の退場。シャルルロワ戦に続き、今季2度目の9人での戦いを強いられる厳しい展開に。好調を維持するオイペンは楽に試合を運び、危なげなく3−0で今季5勝目。勝ち点を17に伸ばし2位に浮上した。ベールスホットの鈴木武蔵はベンチスタートで、69分から出場した。

 

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ズルテ・ワレヘム 2-2 コルトレイク

アウェイのコルトレイクが、後半にスレマニのお膳立てからゲイェとオケンシーがそれぞれゴールを奪い2点を先行する。ズルテ・ワレヘムは84分にドンぺのアシストからプレティンクスが決め1点を返す。さらにその直後、かなり軽微な接触であったように見えるがドンぺが倒されてPKを獲得し、これをフォッセンが決めて同点に。ここまで思うように勝ち点を積み上げられていないズルテはホームで勝ち点3を取りたかったが、怪我で一時戦列を離れていたドンぺが復調傾向にありこれは明るい材料だ。一方のコルトレイクは勝ち点2を落としてしまった恰好だが、7位と依然PO2圏内に留まっている。

 

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ヘント 2-1 セルクル・ブルッヘ

ともに勝ち点8と苦しむチーム同士の対決は、連戦中のヘントが逆転で4試合ぶりの勝利。開幕3戦は無敗だったセルクルはこれで16位にまで落ちてしまっている。

 

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オーステンデ 2-2 アンデルレヒト

ホームのオーステンデが、少ないチャンスを活かしゲイェの2得点でリードを奪って前半を折り返す。2点ビハインドに加えて後半立ち上がりにはクアメが退場し、厳しくなったアンデルレヒトだが、ジルクゼーのゴールで1点を返すと、82分、セルヒオ・ゴメスのクロスをファーでベニート・ラマンが合わせて同点に追いつき、オーステンデからどうにか勝ち点1を持ち帰った。ラマンのヘディングシュートはわりと珍しいのではないだろうか。

 

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シャルルロワ 0-2 メヘレン

前節今季初黒星を喫したシャルルロワは、ホームでよもやの連敗。もともと引き分けが多いために、順位は一気に2桁に。勝利したメヘレンは、今節もニコラ・ストルムがゴール。直近5試合で6得点を挙げている。

 

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ヘンク 3-0 スラン

ミッドウィークのアントワープ戦に敗れて首位に立つチャンスを逃してしまったヘンクだが、オヌアチュのハットトリックで快勝。オヌアチュはこれで公式戦5戦連発となり、いよいよ得点ランクトップのフライを猛追開始。先制点は伊東純也のアシストだが、伊東純也→オヌアチュのホットラインでの得点はELでのラピド・ウィーン戦から4試合連続。

 

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