21/22 ブンデスリーガ 3節 ビーレフェルトvsフランクフルト

「勝点2を落とした」とも、「勝点1を拾った」とも言い難い、微妙だがある意味妥当な引き分けを開幕から2試合繰り返し、3節はホームに帰ってフランクフルト戦。フランクフルトはここまで1分1敗とあまり良くはない滑り出しだが、なんといっても昨季のホームでの同カードは1-5と派手にやられてしまっている。ビーレフェルトのここまでの未成熟な守備組織を考慮すれば、ここで当たるのは少し嫌なタイミングでもあった。

 

ビーレフェルトのスターティングメンバーは、

オルテガ、ピーパー、ニルソン、ブルンナー、ラウルセン、プリートル、クンツェ、ハック、奥川、クロース、クリューガー。

開幕2試合は先発を入れ替えなかったが、今節はシェプフが出場停止なので、代わってハックが出場。またクロースの相方はラスムからクリューガーに代わった。

並びも機能していたとは言い難いこれまでの4-3-1-2から4-4-2へ変更。中央にプリーテルとクンツェが並び、右に奥川雅也、左にハックが入った。

 

フランクフルトは

トラップ、エンディッカ、ヒンターエッガー、ドゥルム、レンツ、フルスティッチ、ソウ、ハウゲ、リンドストローム、鎌田、ボレ。

移籍騒動の渦中にあるコスティッチが欠場し、鎌田大地が先発に復帰した。

ベンチには長谷部誠や、日本のファン界隈で一部カルト的な人気を誇るイルザンカー、重鎮のチャンドラーらが控えている。

 

 

前半はほとんどの時間、フランクフルトがボールを握って過ぎていった。ビーレフェルト戦は前節フュルト戦でも前半は2本のシュートしか打てなかったが、この日もファーストシュートは20分。それもFKのこぼれ球をクンツェが半ばクリア同然に打ったシュートという、前節と全く同じものだった。前半のシュート数自体は4本であったが、そのほとんどは終了間際。マイボールになってもハイプレスに苦しめられ、特長であるオルテガからのロングキックはフィードというよりクリア。セカンドボールは回収できず、初めてそれなりに攻撃の形を作れたのは失点直後の23分。左でクロースが収め、ラウルセンのサイドチェンジからブルンナーがクロス。前節得点をあげたパターンだったが今回はフィニッシュに結びつかず。初めてバックラインから繋ぎプレスを掻い潜っての前進は35分まで待たなければならなかった。このように見た目の上では圧倒的に押されていたし、実際に失点も喫したが、前半許したシュートは4本。中途半端なプレッシングからかなり自由に運ばれていた前節までと比べると、守備はかなり改善された。

 

フランクフルトは左CBのヒンターエッガーの外側にCHのフルスティッチが落ちて、3-1の形で組み立てをスタートすることが多かった。前節までのビーレフェルトなら、後ろの3枚に対し2トップと奥川がチェックに出ていき中盤のソウや降りてくる鎌田にボールを通され放題だっただろうが、この日は4-4-2にしたので、3-1の1にあたるソウへのコースを消すことを優先してクロースとクリューガーがCBに圧力をかけていく。立ち上がりこそ左SBのレンツを経由して外され、また降りてきた鎌田を捕まえ切れずに前を向かれてしまう場面もあったが、大体はSHの奥川とハックがしっかりとポジションを守り、ブロックをコンパクトに保った。特に左サイドのハックは追い方が上手で、対面のドゥルムにボールが入ってもドゥルムはほとんどCBに戻すパスしか選択できなかった。フランクフルトの前線の3枚、ボレ、ハウゲ、リンドストロームに引っ張られてビーレフェルトの最終ラインはなかなか押し上げられず、中盤ラインとのギャップが20m以上広がっている時間が長かったが、ここを狙われたのは最初の10分程度で、それ以降はリンドストロームとハウゲがサイドを入れ替えたり、ボレがSBの裏に走ってロングボールを欲しがったり、フランクフルトが手を替え品を替え突破口を探すような時間が前半は続いていく。

 

均衡が破れるのは21分、フランクフルトは右サイドのオーバーロードビーレフェルトのブロックをサイドに寄せると、ソウがハーフウェーライン付近をドリブルで横断してボールを中央へ動かす。左SBのレンツが下がってきてボールを受けると、アプローチに行った奥川の死角で、この時は中盤にいたフルスティッチが引き出すレンツはリターンを受け、さらに運ぶと今度はペナルティーエリア付近でハウゲとワンツー。そして鎌田に渡し、走り込んできたドゥルムに鎌田は反転してスルーパス。折り返しを中でハウゲが詰めてフランクフルトがゴールを奪う。レンツに入った時の奥川の寄せ方はブロックの内側へ通すコースを遮断し切れていなかったし、クンツェのスライドが速ければレンツのドリブルのコースを塞げたはずだ。ただしこの失点に関しては、フランクフルトのボール運びが巧妙だったと割り切ってしまっていいだろう。特にソウのドリブルに合わせてフルスティッチとレンツがそれまでと違う移動を見せてボールを受けたのは、奥川とクンツェのズレを生み出す上で有効だった。ビーレフェルトはここまで集中して守れていたが、ある程度は保持で時間を作るか、スペースを回復する手立てがないと守り続けることはなかなか難しい。

 

点が動いてからはビーレフェルトが少し前への意識を強めたので、フランクフルトの保持は変わらずともややオープンな展開になる。28分に、それまではポジションをしっかり守っていたハックがエンディッカまでプレスに行ったシーンなどは象徴的だ。フルスティッチに対してクンツェが飛び出して外され、逆サイドに展開されてしまうということもあった。しかし、もちろんトランジッションが増えることが相手にのみ有利に働くということはない。前半の最後にはプリートルとクンツェが左右を入れ替え、相手の左サイドにボールを誘導してプリートルが奪い、ショートカウンターに転じる場面を2度作った。

 

前半終了時の勢いそのままに、後半はビーレフェルトがDFラインをより高く保ち、試合自体のプレーエリアを前進させることに成功する。ニルソンが跳ね返したボールを奥川が拾ってクリューガーがポスト直撃のシュートを放ったり、今季はここまで消極的なプレー選択が目立つピーパーが自らドリブルで運んだりと、陣地を回復したことによるメリットは随所に見られた。また前半とは変わって後方からしっかり狙ってフィードを送る余裕が生まれたので、クロースは右サイドに流れてターゲットになる。この傾向はクリューガーに代わってラスムが入り、ラスムが左寄りのターゲットになったことで顕著になった。地上戦では、ハックが降りて引き出し、交代で左SBに入っていたチボーラとのコンビで左から前進するような、前半にはなかったパターンも見られた。フランクフルトは時折ショートカウンターでゴールに迫る機会もあったが、前半とは試合のバランスが変わってしまったことで落ち着かせる時間を作れなかった。フルスティッチがDFラインに落ちてボールに触る回数も激減した。

 

78分には、ここまで攻守に最も輝いていたハックが最大の見せ場を作る。ブルンナーのロングスローのこぼれ球をペナルティーエリア外からハックがダイレクトでボレーシュート。これはキーパーにはノーチャンスだったが、ライン上でヒンターエッガーにブロックされる。中央にクロース、ラスムがいるとサイドからのロングスローやハイクロスはどこが相手でも十分な脅威になりうる。この試合に関しては、クロースはヒンターエッガーに上手く封じられていた印象が強いが。

 

その直後にクンツェに代えてヴィマーを投入。ヴィマーはこれがビーレフェルトでのデビュー戦。プリートルを中央に、奥川とヴィマーがやや絞り気味で中央をケアするような形になる。そしてこのヴィマーが同点ゴールを生み出す。相手のFKを防いでからのカウンター。右HSからクロースが中央を飛び越えてロブパスで奥川に展開すると、奥川が収めて走り込んだハックにクロス。これは弾かれたが、クロースが拾い、ややタッチが大きくなって流れたボールをヴィマーがダイレクトでミドルシュート。ダイナミックなカウンターから最後は綺麗なミドルが決まり、後半の攻勢を結果に繋いだ。ヴィマーはその後も難度の高い遠距離のボレーを枠に飛ばしたり、サイドを独力で破ってチャンスを演出したりと手がつけられない状態に。逆転こそならなかったが、デビュー戦にしてホームのファンに大きなインパクトを与えた。

 

 

総括

 

これまでの2戦とは変わって、ソリッドな守備からゲームに入れるというところを見せたビーレフェルト。今季初めてリードを追いかける展開を味わったが、格上相手にあれだけの圧力をかけられるパワーがあることも証明。攻守に手応えのある試合に。個人に目を向けると同点ゴールのヴィマーはもちろん、初先発のハックが攻守両面で圧倒的な存在感で、クリューガーも特に前半は難しい展開だったが実力を示した。ラウルセンの怪我で緊急出場のチボーラも安定していて、新加入組がこぞって良いパフォーマンスを発揮した。昨季は新加入で期待通りの活躍をしたのは堂安、奥川だけということを考えると、早い段階で新戦力がチームにフィットしていることはポジティブ。代表ウィークで離脱する選手も多くはないので、中断明けのシーズン初勝利を目指してこの2週間でチームを成熟させたい。