ベルギー ジュピラー・プロ・リーグ 10節

10月の代表ウィーク前、最後の1試合。前節終了時点で1位のクルブから、12位のシャルルロワまで勝ち点差はわずか5。特に2位から4位はオイペン、ヘンク、アントワープが勝ち点17で並び、8位から12位も5チームが勝ち点13で並ぶ混戦ぶり。今節はオイペンvsヘンク、シント・トロイデンvsオーステンデ、メヘレンvsスタンダール、スランvsズルテ・ワレヘムと同勝ち点のチームによる直接対決が4試合もあった。クルブはアウェイでアンデルレヒトと引き分け首位陥落。ヘンクとの直接対決を制したオイペンがトップに返り咲き、ヘントに勝利したアントワープも同じく勝ち点20で2位につけている。三笘薫が初アシストを決めたユニオン・サン・ジロワーズは3位に浮上した。

 

 

 

シント・トロイデン 1-1 オーステンデ

勝ち点13で並ぶ、8位シント・トロイデン(以下STVV)と10位オーステンデの6ポインター。移籍市場のクローズ後はスタメンを固定していたSTVVだが、この日はともに新加入の原大智とバウアーが初のスタメン出場を果たした。試合序盤はホームのSTVVが積極的なプレッシングでオーステンデに自由を与えず。保持ではこれまで通り、あまり繋がずシンプルに蹴りリスクを避けていたが、相手陣地でキープに成功させると左サイドで人数をかけて空けた右サイドの橋岡大樹へのサイドチェンジや、ハーフウェイライン+5〜10m程度のところで橋岡が前を向いてボールを持ち、オーステンデの左SBエンディッカを食いつかせてその背後にデ・リダーが走り抜けるパターンがよく見られた。前半のスタッツではSTVVの攻撃の7割が右サイドからで、橋岡からクロスが上がるシーンも多かったが、試合を通じてほとんど中の選手とは合わなかった。初先発の原大智は序盤こそボールを収めきれない場面が目立ったが、25分にビッグチャンスを演出する。カウンターでコナテからのパスを収め、右サイドにスルーパス。最初におパスを出したコナテが抜け出し独走、1vs1のシュートチャンスはキーパーに阻まれるが、リバウンドを原が拾い、ファーへクロス、これをデ・リダーがオーバーヘッドで叩き込んだが、無情にも戻りオフサイドでノーゴール。原としては幻のアシストとなったが、これ以降はリズムを掴んだか簡単に味方にはたくポストプレーでチームの攻撃に効果的に加われるようになってきた。一方ペースを握れていなかったオーステンデもこの辺りの時間帯から修正。4バックをあまり崩さずにビルドアップをしようとしていたが、CHがCBの間に落ちてSTVVのプレスを噛み合わなくし、中盤にスペースを得て前に運べるようになっていく。印象としてSTVVのほうが主体的に試合を進めているように見えた前半だが、コナテのシーン以外でシュートを打てなかったSTVVに対しオーステンデはショートカウンターやセットプレーで多くゴールに迫っていた。

後半ではショートカウンターからファーのWBに通す形でよりシンプルに攻撃できるようになってきたSTVV。キープはできなかったものの味方へのフリックが機能するようになってきた原は、左サイドでダーキンのスルーパスに抜け出し、初めて裏抜けで味方からのボールを引き出す。その直後、ライストナーが右サイド高い位置でオーステンデのカウンターの芽を潰すと、橋岡が受けてスルーパス、抜け出した鈴木優磨のシュートはキーパーに阻まれたが、跳ね返りを原が冷静に流し込んでSTVVが先制。原はこれがSTVVでの初ゴールとなった。ただしSこのリードを長くは保てず、数分後に右サイドのFKから、メドリーが頭で繋ぎ、ゲイェにフリーで押し込まれる。オーステンデのゲイェはこれで今季7点目。その直後、STVVはダーキン、デ・リダーに代えてライツ、ブリュースを投入する、前節は勝ち越しを掴んだ交代を行う。デ・リダーは右サイドで攻撃にコミットすることが多かったが、ブリュースは左サイドに流れることが多いので前半とは変わって左からのクロスが増えた。63分には、その左サイドのカカーチェのクロスをイェッケルがクリアミスし、原の目の前にこぼれたが、シュートはユベールが好セーブ。原にとってはストライカーとして決め切りたい場面だった。

以降もSTVVが押し込んだが、勝ち越せず1-1で終了。上位に食い込んでいきたい両チームにとって悔しいドローだった。先発出場のシュミット・ダニエル、橋岡、鈴木、原は全員フル出場。原は得点でアピールに成功したがFWとしては課題もあり、これでやっとポジション争いのスタートラインに立ったというところ。この日は出場のなかった林大地と、改めて鈴木優磨のパートナーの座を争う格好になるだろう。

 

 

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アンデルレヒト 1-1 クルブ・ブルッヘ

9月は無敗だったが、ここ2試合は先制されて追いつくのがやっとだったアンデルレヒト。真価の問われるゲームに。直近のCLでライプツィヒを破ったクルブは連戦だがメンバーを固定。怪我の影響でベンチスタートのフォルマーを除けば、これが現在の最適解ということなのだろう。

アンデルレヒトはまず速攻で押し込み、ついで先に保持を安定させる。しかしこの試合ではビグマッチとあってかいつもより慎重に見え、CHのカレンやオルソンはあまりDFラインまで降りて来ず、逆に普段高い位置を取る両SBも自重気味だった。クルブも同様にシンプルに縦に入れることが多かったが、こうして一度ラインを上げてからのプレッシングで少しずつペースを掴んでいく。ボールはソワーのいる右サイドに集め、そこに逆サイドのラングも寄ってきて、入れ替わるようにリッツやヴァナーケンが裏に抜ける形が最近は目立つ。勢いを得たクルブは、アンデルレヒトがキーパーから繋ごうとしたボールをリッツが奪って決めて早々に先制した。その後アンデルレヒトはクルブのDFラインの裏を狙いいくつか危険なシーンを作ったが、トータルではクルブに分がある前半であった。

後半はアンデルレヒトがいつもの形でボールを回せるように変形を試みるが、チャンスの創出には繋がらず、逆にソワーに代えてフォルマーを入れ、守備を意識し始めたクルブが縦に速いシンプルな展開から再び押し込むようになる。アンデルレヒトのこの悪い流れを一変させたのはベニート・ラマン。73分にピッチに入ると、その2分後、アムズのパスに抜け出し同点ゴールを奪った。右サイドでフリーのアムズに対しバランタが中央から遅れて対応しにいくシーンが少し目立ち始めていたが、このミスマッチを修正される前に同点に追いつくことができた。クルブの混乱は失点後も少し続いたが、意気消沈したかラングに代えてファンデルブレンプトを入れ、最後はドロー狙いで試合をクローズさせた。ホームのアンデルレヒトは3戦連続のドローで足踏み。3試合全てが先行されて追いかける展開となっている。前節に引き続き勝ちきれなかったクルブはここでついに首位陥落。この1ヶ月は、少なくともリーグでは”安定”をとったように見えるが、次は勝ち切る力を高めていかなければならないだろう。

 

 

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アントワープ 1-0 ヘント

この試合に勝利すれば、オイペンとヘンクがドローなら首位、勝敗がつけば勝利した方のチームと勝ち点で並んで2位となれるアントワープ。開始早々にフライのフリックに三好が抜け出し大きなチャンスを得るが、折り返しをDFにクリアされフィニッシュに至れず。この試合のアントワープは三好とフィッシャーをシャドーに置く433で、ボールを持てばフィッシャーも三好もかなり内に入ってプレーする。特に左サイドのフィッシャーの分の守備の負担はナインゴランがケアしていて、時にはフィッシャーのさらに外側で守備をするようなシーンも。三好とフィッシャーが守備で多少遅れることは、あらかじめ許容し対策をしておくという形に見えた。よりよいパフォーマンスをしていたのはヘントの方。アントワープはビルドアップにさほど拘らず、ハイプレスもなかったが、ヘントはその隙を見過ごさず高いラインを保って、最初の30分はかなりの時間相手陣地に押し込み、ショートカウンターでチャンスを継続的に作った。惜しむらくはチャクヴェタゼの退場。意図してのものではないが、プレスに行った際ゲルケンスの足を踏む格好になってしまい前半33分でヘントは10人に。それでも前半はペースをアントワープに渡さなかったが、後半はゲルケンスに代えてサマッタを投入し、数的有利を活かし前線のパワーを補強したアントワープにじわじわと押されていく。残り15分までは耐えたが、フェルストラーテのFKをボダールがセーブしたこぼれ球をフライに詰められあえなく失点。このままアントワープが1-0で勝利し2位に浮上。ヘントは5試合勝利なしで15位まで後退した。決勝ゴールのフライは今季早くも11ゴール目。驚異的なペースで得点ランクトップを快走中だ。

 

 

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メヘレン 3-1 スタンダール

勝ち点13で並ぶが、直近の成績はメヘレンが2連勝、スタンダールが2連敗と対照的。8月は悪くなかったものの、なかなか調子を取り戻せないスタンダールは5バックに変更。しかし成功せず、18分までにメヘレンに3ゴールを許した。メヘレンはストルムの連続ゴールこそ止まったものの、チームの得点力は止まらず、好調を維持している。

 

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コルトレイク 2-2 シャルルロワ

勝ち点1差の対決。コルトレイクは前半終了間際にスレマニが今季6点目となるゴールを自ら得たPKで挙げ、先制。後半シャルルロワ森岡亮太→ニコルソンのホットラインで追いつく。5分後にアリウイに決められ再度勝ち越しを許すが、アディショナルタイムにゴリザデのゴールでどうにか追いついた。コルトレイクは3戦負けなしで、今季のドロー3つは全てが2-2。シャルルロワは連敗を2で止めたが、この1ヶ月は停滞期に。森岡は今季3アシスト目を記録。この試合ではシュートにつながるパスを多数供給し、SofascoreのレーティングではUSGのウンダフに続き7.74でリーグ2位となっている。

 

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セルクル・ブルッヘ 0-3 ユニオン・サン・ジロワーズ

USGは後半、ウンダフのアシストからファンゼールのゴールで先制、さらに同じラインで追加点を奪うと、83分から三笘薫が交代で出場。直後に、左サイドを突破してラプサンのゴールをアシストした。2ゴールのファンゼールはこれで今季7ゴール。USGは勝ち点を19に伸ばし、1位オイペンと勝ち点1差の3位に。セルクル・ブルッヘは3連敗で17位に転落した。

 

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ルーヴェン 0-0 ベールスホット

未勝利、勝ち点1で最下位に沈み、目下泥沼7連敗中のベールスホットは、アウェイでルーヴェンと引き分けて2節以来の勝ち点。今季初めてのクリーンシートも達成した。ベンチスタートが続く鈴木武蔵は58分から出場。先週は首位クルブを追い詰めたルーヴェンだが、今節は最下位ベールスホットに勝ちきれず3戦勝ちなし。10試合を終えてドローが6試合はリーグ最多である。

 

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スラン 5-1 ズルテ・ワレヘム

勝ち点9で並び、ともに3試合勝利のないスランとズルテの直接対決は、ジョージア代表FWミカウタゼのハットトリックなど大量5得点でスランが勝利し連敗を3で止めた。前節は終盤に2点ビハインドを追いついたズルテだが、今節は26本ものシュートを放たれ大敗。1ヶ月以上勝利がない。

 

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オイペン 3-2 ヘンク

先に試合を行っていたクルブ・ブルッヘが引き分けたため、どちらにとっても勝てば首位となれる2位、3位の直接対決。ヘンクは前半、PA内でムニョスからボールを受けた伊東純也のタッチが流れたボールをトルストヴェットが決めて先制。少し怪しいが、伊東はこれでリーグ戦4試合連続のアシストになった。その後、オイペンはプレヴリャクがPKを決めて1-1で折り返すが、59分、抜け出したトルストヴェットをアマトが倒してしまい退場。その10分後、ウグボのゴールでヘンクが勝ち越す。ヘンクはこのまま逃げ切りたかったが、85分カウンターを食らいプレヴリャクにこの日2点目を許し同点に追いつかれる。アディショナルタイム、左CKが流れたボールをオイペンのCBへリスが豪快なボレーでネットを揺らし、土壇場でオイペンが逆転。クルブをかわし、アントワープとは勝ち点で並んでいるものの得失点差で首位に立った。ヘンクはオーステンデ戦、USG戦などに続き、またしても終了間際にセットプレーから失点し勝ち点を失う結果に。直近のELでも大敗しており、過密日程が祟ったか息切れ気味で代表ウィークへ向かうことになった。フル出場の伊東純也は、先制点のアシストの他にもポスト直撃のシュートや、ウグボのゴールにつながるクロスなど攻撃で存在感を十分に発揮した。

 

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