W杯2018 グループA 第1節 エジプトvsウルグアイ

アフリカネーションズカップではいつも優勝してるイメージがあるのに、W杯では見かけないエジプトは7大会ぶりの出場。直近の試合は全く見ていないが、クーペルがどんなチームを作ってきたのか、大変興味がある。

なお怪我の状態が気になるサラーは、今日はベンチスタートとなった。

 

ウルグアイは例のごとくタバレス監督の下、チリが散りアルゼンチンとコロンビアが苦しんだ南米予選で、ブラジルに次ぐ2位といい具合に通過。グループAはポット1がロシアなため、このグループにおける本命と目されている。

 

 

 

 順調なエジプト、手探りのウルグアイ

 

4-1-4-1気味でセットしてきたエジプトと、4-4-2のウルグアイ。両チームとも攻撃より守備に重きを置いた、堅い立ち上がりとなった。

 

まずはエジプト。高い位置からウルグアイのDFラインに対してプレスをかけ、まずはビルドアップを分断。下がって受けに戻る 15 ベシーノや 6 ベンタンクールには 17 エルネニーが飛び出してついていくことも多かったが、その際にはFWがしっかりとCBから空いたスペースへのコースを封鎖し、連動したプレスが見られた。

ここを突破されると、時に5バック、あるいは6バックとなることも辞さずにしっかりと全員が守備に戻る。アンカー脇のスペースを突かれた際にはやや対応に苦慮している感もあったが、9 スアレス、21 カヴァーニの2トップに対しては特に厳しい警戒を続け、中央のスペースでは終始自由を与えなかった。

 

一方で、攻撃はエースの 11 サラーを欠く中なかなか思い描いたようには進めることができなかった。相手の強力な2トップが虎視眈々と速攻の機会を伺っていることもあってなかなか多くの人数を割くことができず、ボールを保持できてもウルグアイの素早い帰陣と片サイドへの圧縮の前に突破口を見つけられず、大きなチャンスを作るには至らなかった。

速攻が機能する場面もなく、この辺りはやはり、サラーを中心とした攻撃が主な形としてデザインされているはずなので、彼が出てくればまた違った、「本来狙いたい」エジプトの攻撃が発揮されるのだろう。

 

 

対してウルグアイ。試合前の時点では、もう少しロングボールを中心とした攻撃をしてくるだろうと予想していたが、予想に反してあまりボールを放り込むことはせず、ゆっくりと後ろから繋いでいくことが非常に多かった。CBの 2 ヒメネスと 3 ゴディンは守備面では非常に優秀な選手ではあるが、配球に優れているわけではない。さらにはエジプトの組織的な守備にも苦しめられたが、CHの2人、ベンタンクールとベシーノのボールの引き出し方は素晴らしかった。この2人が、相手の最前線をこえた位置で前を向いてボールを受けると、両SHがHSに絞り、同時に大外のレーンをどちらかのSBがあがってくる、というのはよく見られた場面だったが、これが特に大きなチャンスに結びつくということは残念ながらなかった。

右SHの 8 ナンデス、左SHの 10 デ・アラスカエタは積極的にボールに触ろうという意思は見せていたが、エジプトの堅い守りの前に違いを発揮できず、後半の比較的早い時間帯に退くこととなってしまった。

 

全体的に攻めあぐねているように見えたウルグアイだったが、特に焦りは感じられず、まずは無理をしないで、エジプトの出方を見つつ、いろいろ試行錯誤しながら、といった前半の進め方に。いざとなれば無理が利く2トップに全てを賭けることもできるし、セットプレーもある。というわけでまだ変化させる余地を残して前半を終えたという格好に。

エジプトは、しっかりと狙い通りに進められたけど、サラーが控えていることを除けばこれが精一杯なのでは、という感じに。ちなみにおんなじようなことを岩政先生もハーフタイムにツイッターで指摘してました。

 

 

実は策がなかったウルグアイ

 

後半まず先に目に見えるような変化をさせてきたのは意外にもエジプトの方。4-1-4-1気味だった守備陣形をはっきりと4-4-2に変え、CBとCHの間のパスコースをよりはっきりと分断しに行ったのに加えて、中盤センターにアンカーではなくCHを2枚並べることで、相手のSHにアンカー脇のスペースを突かれる、という問題にも同時に対処した。ウルグアイは後半開始直後こそビッグチャンスを迎えたものの、この変化を前により一層組み立てには苦慮することとなり、また先述の通り、SHの2人が輝けなかったのもここに原因があるだろう。

 

また、ウルグアイの攻撃に関して、前半ではまだ手探りのような状態、という印象を受けた。中盤の底に位置する20歳のベンタンクールは別として、このチームはボール保持に適したメンバー編成とは言えない。しかし、最前線には世界屈指のFWを贅沢なことに2人も抱えている。彼らがゴールに近い危険なエリアでプレーするまでの道筋さえデザインできていれば、あとはなんとかできてしまう可能性が高い。この点に関して、様子見の前半と違って後半はいくつかの用意されたパターンを披露してくれるのでは、という期待を寄せていたのだが、もしかしたら本当に何もないのかもしれないと思わせうようなプレーぶりが90分続いた。
サラーは最後まで登場せず、エジプトがギアをあげて攻撃に注力するという局面がなかったこともあるかもしれないが、簡単に長いボールでFWの2人を走らせるという選択も最後までなかった。

 

こうして試合は終盤を迎え、カヴァーニが放った絶好の位置からのFKもポストを叩き、スコアレスで終わるかとも思われた89分、ついに試合が動く。

右サイドで得たFKから、ヒメネスが中央で頭で合わせてゴール。最後の最後で理不尽な飛び道具を炸裂させたウルグアイが、48年ぶりとなる、W杯初戦での勝利を手にした。

 

 

 

感想

 

守備面での完成度は高かったエジプト。この辺りはさすがクーペルである。この試合ではあまり注目していなかったので、GSの残り2試合で、エジプトの守備についてはしっかりチェックしてみたい。

結局モハメド・サラーに出番は訪れなかったが、このグループ内における力関係とサラー自身のコンディションを考慮すると、1位通過候補筆頭のウルグアイ相手には無理をさせず、ロシア、サウジアラビアとのゲームで存分に力を発揮してもらうほうが得策と言えるので、今日の温存は妥当だろう。ウルグアイ相手に怪我の具合が悪くなってしまっては困るのである。

再三にわたって好セーブを見せたGKの 23 エル・シェナウィ、途中足を痛めながらも守備に奔走し貢献した 22 アムル・ワルダは次の試合まで覚えておこうと思う。

 

 

ウルグアイは苦しみながらも第一関門クリア。今回はゴディンではなく相方のヒメネスだったが、やはり必殺のセットプレー。

スアレスはまだ噛みもせず、ハンドもしなかったが、低調なパフォーマンスだったため、単純にやや衰えがきているのでは?という疑念もにわかに出てくるのではないだろうか。

衰えといえば、老将タバレス監督はついに杖をつくようになっていて、それも気がかりである。