【現地】ビーレフェルトvsカイザースラウテルン

2018年4月27日

2.Bundesliga 第32節

DSCアルミニア・ビーレフェルトvs1.FC カイザースラウテルン

 

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最終盤に差し掛かり、いまだに昇格、降格ともに1チームも確定していないブンデス2部。31節終了時点で5位(勝点44)のビーレフェルトと、最下位である18位(勝点29)に沈むカイザースラウテルンの一戦。

 

いまだ昇格降格ともに確定していないと書いた通り、今季のブンデス2部は異常ともいえる大混戦。3試合を残して5位につけるホームのビーレフェルトは、まだわずかに1部昇格の可能性を残しつつも、試合開始前の時点ではまだ数字上ではまた3部降格の可能性もあった。

 

一方アウェイのカイザースラウテルンは、唯一この大混戦から取り残され、3節以降は一度も降格圏を脱せず最下位。31節終了時点で3部との入れ替え戦に回る16位との勝点差は8。この試合に勝利しなければその瞬間、クラブ史上初となる3部降格が決まってしまうという厳しい状況で迎えるゲームとなった。

 

 

 

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両チームのスターティングメンバー。

 

ビーレフェルトは守備陣に離脱者が続出。CBは年明け以降、主にキャプテンのベルナーとベーレントがコンビを組んでいたが、ベルナーは前節ブラウンシュヴァイク戦から続けて欠場、ベーレントは28節のアウエ戦で負傷して以降、今季中の復帰は絶望的という見通しで欠場が続いている。右SBはレギュラーのディックが累積警告で出場停止のため、18歳のエズカンがトップチームでは初めての先発出場となった。

年明け以降ビーレフェルトは4-1-4-1を採用し勝ち点を重ねてきたが、 29節インゴルシュタット戦以降はエースのクロースがスタメンに復帰し4−4−2に変更。その変更に伴って17歳のマッシモが4戦連続右SHのスタメンを勝ち取っている。

 

カイザースラウテルンは累積警告で出場停止の左SBグヴァラを含め、前節ディナモ・ドレスデン戦からは4人を入れ替え。ベンチには元トルコ代表のベテランFWハリル・アルティントップも控えている。

 

 

 

試合序盤のペースを握ったのはビーレフェルト。普段はパス、フィードに長けたCBのベルナー中心にDFラインから長短のパスを織り交ぜ時間をかけた組み立てを行っていくが、この日はCBのメンバーが全く異なっていたためいつもとは違った試合運びに。早い段階でCHのプリーテル、シュッツに預けるとケルシュバウマーも加えた3人で中央でのボール保持。ラウテルンの守備の強度もイマイチ、特に中央に寄ってハーフスペースでボールを受けるケルシュバウマーを捉えきれていなかったので、停滞しがちだったとはいえ比較的容易に中央のエリアを占有すること自体はできていた。時間の経過とともに相手ゴールまで迫る機会も増え、特に20分から30分にかけては続けざまにPA内でのシュートチャンスを作るも、最後のところではラウテルンもしっかりと集中して防いでいた。

 

一方やや押され気味の立ち上がりとなったラウテルンは、中盤でのトランジッション合戦を避けてロングボール主体の展開。ターゲットは左サイドのイェンセンで、左へと流れたオサヴェにセカンドボールを拾わせることを攻撃のスタートとしていた。オサヴェは左サイドでも起用されている選手で、おそらく試合前からビーレフェルトの右SBエズカンを狙いうちにしていこうという意図があったのだろう。特にオサヴェに対して、エズカンは振り切られてしまう場面が多く、ビーレフェルトは右サイドの守備にやや不安を残していた。

 

 

最初の得点はそのラウテルンの左サイドから生まれる。SBのアブ・ハンナがマッシモからボールを奪うとそのまま持ち上がり、左に開いたオサヴェへ。対面のエズカンをちぎったオサヴェから中央への折り返しは飛び込んできたムヴェネには合わなかったが、ちょうどフリーのアンデルソンへとこぼれ、それを押し込みラウテルンが先制に成功する。

 

アブ・ハンナがマッシモからボールを奪ったシーンはややファール気味であり、また最後に押し込んだアンデルソンのポジションもオフサイドギリギリであったためややスタンドが騒然としたが、この2つの判定はともにノーファール、オンサイドで正しいだろう。結果として、オサヴェに左サイドを突かせるラウテルンの狙いは奏功した。

 

 

この不本意な失点によってビーレフェルトの選手たちはペースを完全に乱してしまう。失点する以前から、会場全体の高いテンションにビーレフェルトの選手たちはネガティブな影響を受け必要以上にエキサイトしている面があったのだが、失点を契機にそれが顕著に現れるようになってしまった。この日は普段よりも多くの観客が入っていたがゆえに、ワンプレーごとのスタンドの反応はより大きく感じられ、それにネガティブに乗ってしまいストレスを露わにする選手が多くいた。欠場していたキャプテンのベルナーやベテランのディックはこのような展開でも、プレーや態度で、チームメイトが正常なメンタルを取り戻せるよう働きかけられる選手だ。そういう意味では、彼らの存在の大きさに改めて気づかされる試合でもあった。

特に若い選手が多く出場していたこの日のビーレフェルトは失点以降のネガティブな空気を払拭できぬまま、前半が終了する。

 

 

 

ビハインドを背負ったビーレフェルトは、後半開始からエズカンに代えてヴァイーラオホ。最近は見られなかったが、ヴァイーラオホは本来1列前の選手でありながらビハインド時に右SBを務めるというのは前半戦にはよく見られた起用だ。3月以降はベンチスタートが続いているものの戦術理解に優れ、イレギュラーな展開でも平均以上のパフォーマンスを安定して出せる貴重な選手である。

 

ラウテルンは勝たなければ降格という相手よりも高いモチベーションと、先制以降のビーレフェルトの自滅でペースを握れた前半の好循環の勢いを変わらず維持し、前半の立ち上がりからは格段に向上したパフォーマンスを後半に入って見せるようになる。左サイド狙いが結実したこと、前半に一時継続して押し込まれた時間帯を徐々に中盤のラインを下げ耐え切ったことで、攻守において抑えるべきポイントをチームとして確立できたことが要因かもしれない。

 

 

ビーレフェルトも前半から選手たちは切り替えていたようには見えたが、安定しだしたラウテルンを切り崩せない、という展開で再びラウテルンにゴールが生まれる。

53分、2点目もやはり左でのカウンターから。ボールを受けたオサヴェがそのまま1人で左サイドを突破し、折り返したボールを再びフリーのアンデルソンがファーで詰めゴール。1点目よりもビーレフェルトが押し込んだところからのロングカウンターで人数が足りていなかったという事情もあるが、前半散々狙われたサイドから再びオサヴェに突破を許しての失点となってしまった。

 

 

2点のビハインドを背負ってしまったビーレフェルトはもうフラストレーションを溜め込んでいる場合ではないので完全に集中を取り戻し攻勢を強める。早いタイミングで長いボールを放り込むことが多くなり、中央で渋滞していた前半とは打って変わってオープンな展開に変わっていく。この攻撃にラウテルンはよく対応していたが、61分、試合の展開を大きく左右するシーンがやってくる。

カウンターで抜け出したフォーゲルザマーからのパスを受けたクロースの放ったシュートを、戻ってきたケッセルがゴールライン上で腕でブロック。ケッセルは退場となりPKの判定が下される。これをクロースが決め、ビーレフェルトが1点差に迫る。

ここまでよく耐えてきたラウテルンだが、30分を残して10人になってしまった上に失点を許し、苦境に追い込まれてしまった。

なおクロースはこのゴールでアルミニア・ビーレフェルトでの得点を112ゴールとし、クラブ内通算得点ランキング単独トップにたった。

 

 

あまりいいとは言えない内容で、かつ2点ビハインドから、一気に数的優位かつ1点差としたビーレフェルトは完全に息を吹き返す。攻撃の圧力に耐えかねたラウテルンのDFラインが徐々に押し下がり、これまでよりも手数をかけずにゴールへと迫れるようになる。そして68分、右サイドからヴァイーラオホがあげたアーリークロスにフォーゲルザマーが頭で合わせ同点。苦戦を強いられてきたビーレフェルトがあっさりと2点ビハインドの帳消しに成功する。

 

 

奇跡の残留へは絶対に勝利が必須なラウテルンは攻撃に転じざるをえなくなったが、むしろ下がりすぎてしまった最終ラインが再び押し上がり、攻撃に転じられるようになって大味なカウンター合戦へと試合は変貌していく。

ケッセルの退場を機にビーレフェルトが押し切るかと思っていたが、2−2になって以降はほぼ互角の内容だったであろう。

 

 

試合が終了に近づくにつれ、ラウテルンは攻撃に割く人数をより一層増やし、とにかく前へとボールを運ぶようになる。ATに入ると、セットプレー時にはキーパーのミュラーもゴール前へ攻撃参加。通常このようなオールアウトアタックはビハインドのチームが行うものであるが、このときはビーレフェルトにリードがあったわけではないのでビーレフェルトもセットプレーを防いだ後はキーパーのいないゴールを全力で狙うというちょっと珍しい局面となった。

捨て身の攻撃でラウテルンは何度かビッグチャンスを作ったが、キーパーのオルテガがビッグセーブを見せビーレフェルトがしのぐと93分。途中出場のシュタウデから抜け出してパスを受けたクロースがそのままキーパーとの1vs1を沈めついにビーレフェルトが逆転。そのまま試合は終了しビーレフェルトは苦しみながらも勝点3をゲット。

一方のラウテルンは2試合を残してクラブ史上初の3部降格が決まってしまった。

 

 

 

感想

 

これまで何度スタジアムで試合を見てきたかわからないが、実は唯一現地で経験したことがなかったのが降格決定の瞬間。今回は初めてそれを見届ける格好となった。

 

ビーレフェルトを応援しているし、力関係を考慮してもこの日はおそらくビーレフェルトが勝ってカイザースラウテルンの降格が決まってしまうだろうと試合前から想定してはいた。しかし引導を渡すというよりは、上位のチームとして立派に勝ってほしいという気持ちがあったので、この薄氷を踏む展開では土壇場の逆転劇にもかかわらず応援するチームの勝利を心から喜ぶ気にはなれなかったので残念な気持ちである。

また、思い入れのあるチームでなくとも目の前で降格決定に立ち会うというのは心苦しいものであった。

 

試合後には電光掲示板にビーレフェルトから、カイザースラウテルンに向けて励ましのメッセージが掲出されていたが、この試合のカイザースラウテルンの選手、そして最後までチームを支え続けたファンの姿勢には敬意を表したい。おそらく多くの選手がチームを去り厳しい戦いになることが予想されるが1シーズンでの2部復帰を陰ながら応援しようと思う。

 

 

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